http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070527i101.htm
【北京=寺村暁人】中国政府が、原子力発電所による国内の発電容量(能力)を、2030年までに現在の15〜20倍に増強する目標を立てていることが26日、明らかになった。
中国の建設省が北京で開いたエネルギー戦略フォーラムの講演で、中国の電力関連学会の関係者が公表した。
中国では現在、原発10基で800万キロ・ワットの発電能力がある。関係者によると、中国のエネルギー政策を担当する国家発展改革委員会が、これを2030年までに1億2000万〜1億6000万キロ・ワットに増強する内部目標を設けているという。中国は2020年までに4000万キロ・ワットにする目標を公表していたが、これを大幅に加速させる。
今後20年余りの間に100万キロ・ワット級原発を百数十基建設する計算で、実現すれば、世界最大の原発大国となる。中国が大量の原発建設の目標を立てたことで、原発燃料であるウランの国際的な争奪戦は一段と激しくなる恐れもある。
中国は年間10%前後の高成長が続き、エネルギー消費の急拡大が今後も続くとみられる。現在主流の石炭火力発電による環境悪化も深刻化しているため、エネルギー供給に占める原子力の比重を高める必要があると判断したと見られる。
中国は昨年、オーストラリア政府との間で軍事転用しないことを条件に、ウランの輸入で合意するなど活発な資源外交を展開。ウランの戦略備蓄も開始するなど、原発の大増設に備えて国を挙げてウラン資源の確保に乗り出している。
ウランの指標価格を公表している米Uxコンサルティングによると、ウラン1ポンド(約454グラム)のスポット価格は5月21日現在125ドルとなっており、00年12月の7・1ドルから6年余りで約18倍に値上がりしている。中国の「原子力シフト」で、ウランの国際市況に一段の上昇圧力がかかる可能性も出てきた。
http://www.e22.com/atom/page08.htm
「僕と核」・上
8. スターングラス博士インタビュー
アーネスト・J・スターングラス博士 (Dr. Ernest J. Sternglass)
1923年、ベルリン産まれ。
14才の時に家族とアメリカへ移住。若き頃に、既に世界的権威だったアインシュタインと議論を交わし、科学の志を新たにする。1960年から1967年は、ウェスティングハウス社の研究室でアポロ月面科学ステーションプログラムの局長を努める傍ら、アメリカの大気圏核実験に反対するようになる。彼が国会で発表した研究の成果は、ケネディ大統領が'63年にまとめた部分的核実験条約(PTBT)の締結に大きく貢献した。(ケネディはその僅か三ヶ月後に暗殺されてしまう)70年代に入って、今度はそれまで安全だと信じていた原子力発電所の危険も公に問うようになる。'81年に出版した「Secret Fallout: Low-level Radiation from Hiroshima to Three Mile Island」(邦題:赤ん坊を襲う放射能)は、低レベル放射線研究の代表的な本となった。1983年よりピッツバーグ医大、放射線医学名誉教授を努める。過去にスタンフォード大学、インディアナ大学、フランスのアンリ・ポアンカレ大学、ジョージ・ワシントン大学、コーネル大学で放射線医学と物理学の教壇に立つ。 1995年より、Radiation and Public Health Project (放射能と公共健康プロジェクト)局長。
(photo by Leuren Moret, Februray 2006, Japan)
ここで、スターングラス博士にお話をお聞きしたいと思います。彼は、原子力の本場アメリカで、60年代から、核実験や原子力発電による低レベル放射能の影響を訴えて続けて来た、数少ない科学者の一人です。2006年の二月には念願だった来日を果たし、青森県の六ヶ所村も訪ねています。
こんにちは、今日はよろしくお願いします。
S博士「まずはじめに、日本には55基もの原子炉が運転しているのを知ってるよね。」
、、、はい。
S博士「それに、ほとんどが海岸沿いの国土の2割程度の面積に人口が集中していて、原発も割と近くに配置されている。だから、日本政府が2003年度に発行した、過去100年の日本人の死因の推移を見たとき、あまり驚かなかった。」
と言いますと。
S博士「日本では、戦後の50年で、がんの死亡がずっと増え続けている。1900年台の前半は、がんはそこまで存在しなかった。日本に原爆が落とされて、アメリカ製の原子力発電所が導入されてから、一気に増え始めたのだ。今でも日本にある原発の八割がアメリカ製だ。」
はい。
S 博士「そして、本場のアメリカで分かって来たことが、原子力発電所というのは、公に発表されているよりも、ずっと大量の放射性物質を放出しているということだ。大半は、細かい分子になった、核の分裂によって産まれる物質で、大気や海に放出されている。核分裂生成物というやつだ。」
はい。これが、自然放射線と混同されると、訳分からなくなりますね。
S 博士「その通りだ、そもそも自然放射線というのは、海抜0メートル付近では、0.8 から1mSV(ミリシーベルト)が普通であって、それ以上はラドンなどごく特定の地域しか関係のないものや、0.15mSVほどのカリウムなどを大げさに数えている場合が多い。しかも、ほとんどの自然放射線が外部被ばくを起こすガンマ線で、体の中の特定な器官に蓄積して内部被ばくを起こすものじゃない。ストロンチウム90やヨウ素131などの放射性物質は、体の中に入り込むのと、それと同じ量を地面にばらまいたのでは、威力が全然違うのだ。」
分かります。
S 博士「ヨウ素131は、ほとんどが一週間の半減期だが、これは首にある甲状腺に集中する。甲状腺というのは、体全体の新陳代謝をコントロールしていて、多くの器官が甲状腺のホルモンによって動いている。だから甲状腺が壊れると、大人だと、甲状腺に異常が生じたり、がんになることがある。また、ストロンチウム90は骨に集中する。これはカルシウムと似ているためで、カルシウムは、骨をつくったり、神経の伝達にも欠かせない。要するに、脳みその働き、考える力に貢献している。よって、ストロンチウム90が引き起こす問題というのは、あまり知られていないのが、カルシウムと同じように骨だけじゃなく、脳にも入り込んで、神経にダメージを与えるため、特に脳の発達に支障をきたすようになる。」
赤ちゃんですね。
S博士「赤ちゃんもそうだし、お母さんのお腹の中いる胎児のときからだ。それに、脳みそは10代まで発達し続ける。だからそこに問題が生じると、普通の読み書き、理解する力、計算する力、全体的に影響を受けてしまう訳だ。健康な脳みそをつくる過程でだよ。」
母親は知っておくべき情報ですね。
S 博士「これは、本当に伝えなければいけないことだ。繰り返すが、ストロンチウム90やヨウ素131は自然には存在しないもので、ウランやプルトニウムが核分裂を起こしたときのみ、産まれるのだ。原子炉の中で起きていることは、原爆の核分裂が起こす環境破壊と同じなのだ。つまり、核実験などが広めた汚染を、原子力発電所がそのまま引き継いだに過ぎないのだ。」
なるほど。
S 博士「これは数年前にJournal of American Medical Associationで発表されたばかりなんだが、妊婦が歯科医でX線を数回受けただけでも、散ったX線が、ヨウ素131のように甲状腺に影響を与えて、それが早産につながる確率が数割高くなることが分かった。こうした未熟児は、現在の医学ではほとんどを救うことができるのだが、X線のせいですでに脳の発達に影響が出てしまっている。それが思考力や、集中力の欠如に表れる。脳の発達に支障をもった未熟児は、自閉症になる可能性も出てくるのだ。」
このように器官に集中する放射性物質は、どのようにダメージを与えているんですか?
S 博士「ヨウ素131の場合、ガンマ線というのは、X線と一緒で、とても強いエネルギーを持った光を出す。そして、ベータ線は電子なんだが、数ミリしか飛ばなくても、臓器に埋め込まれると周りの細胞を破壊する訳だ。変異を起こしたり、遺伝子を傷つけてしまう。そして、フリーラジカルが産まれる。フリーラジカルとは、マイナスの力を帯びた酸素分子で、寿命も一瞬なんだが、これがプラスを帯びた細胞の粘膜に引き寄せられて、穴を空けてしまうので、大変なことだ。これらのことは、60年代の後半から70年代にかけて分かったことで、原子力発電を始めたずっと後の話だよ。」
はい。
S 博士「初めての原発が1942年のシカゴだったから、そのおよそ30年後に分かったことだよ。もう一つ興味深い発見だったのは、X線などの強くて短い刺激がつくる多くのフリーラジカルは、実はお互いとぶつかり合って、そこまでダメージを引き起こせないんだ。これを、私は『混んだナイトクラブ効果』と呼んでいる。分かるだろう、狭い空間に人が入りすぎて、身動きが取れないのだ。これで分かったことが、X線などが与える、自然放射線の一年分に値する1mSVほどの一度の衝撃は、思ったほど効果がなく、同じ量を一週間、一ヶ月の間に分けて微量を受けた方が、細胞あたりのフリーラジカルが少ないために、ずっと大きなダメージを与えるのだ。」
そうなんですか。
S博士「このことは、衝撃だった。つまり、X線や原子爆弾のように、集中された強い放射線よりも、永続的な低レベルの放射線の方が、ダメージは100倍から1000倍も大きいことが分かったのだよ。」
なるほど。
S 博士「我々はヒロシマやナガサキで集めたデータを信じきってしまったのだ。原爆は、主にガンマ線と中性子線を一瞬で放出したから、本当に強くて大量のエネルギーを放出した。ましてや、その頃はフォールアウト(『死の灰』と訳される)のことも良く分かっていなかった。要するに、長期的な低レベル放射能の影響を、今日でも、完全に間違って計算しているのだ。2003年にイギリスのクリス・バズビー (Chris Busby) 氏らが、ヨーロッパのECRR機構(European Commission on Radiation Risk) に頼まれて、原子力発電所のリスクについて過去50年の様々な論文やケースを完全に洗い直したところ、同じ結論にたどり着いたのだ。我々は、低レベルの内部被ばくによる影響を、少なくとも100倍から1000倍、過小評価して見積もっているのだ。」
はい。
S 博士「もう一つ言いたいのが、ストロンチウム90は骨に入って、強い電子を放出する。骨髄では赤血球と白血球もつくられているから、ここで異常が起きると、白血病を起こす。また、白血球というのは、体のありとあらゆる病源と戦っているから、白血球がちゃんとつくられないと、これは大都市で警察のストを起こすと犯罪率が一気に高くなるようなものだ。分かるね。ストロンチウム90が白血球を壊せば、体中にがんが起きても止めることができない。ストロンチウム 89の半減期は50日で、ストロンチウム90の半減期は28年だから、体に蓄積されていくものだ。」
そうですか。
S 博士「さきほどの低レベルの放射能の話に戻るが、人々が間違いを犯した原因のひとつに、放射線によるがんの治療による。これは動物実験で、一週間おきに集中した放射線をあてれば、健全な細胞は元に戻るということから、放射量を細かく分ければ、体には影響が少ないと信じられていたのだ。ところが、内部被ばくの場合は、少ない量でも常に体の中にある訳だから、慢性被ばくと言っても良い。これが何十年間と蓄積されると、ストロンチウム90のように白血球が壊されていけば、肺炎やさまざまな感染が起き易く、免疫力が激しく低下することに繋がるのだよ。」
では、質問を変えます。
原子力発電所は、すべての排出物をモニタして、環境もモニタして、すべては安全だと言います。何がいけないのでしょうか?
S 博士「何回も言うが、0.1〜0.2mSVほどのX線の影響と、核分裂生成物を比べて、影響を少なく見積もりすぎているから、誤った安全の基準を適用しているところが間違っている。2005年に発行されたUS Academyの論文には、『どんな微量の放射能でも、必ず何らかのダメージを与えている。無害ということなどない』と書かれているくらいだ。一時期、『微量なら健康に良い』と信じられていたのもまったくの間違いで、『一定値以下なら安全』と信じられていたことも、間違いだった。これはようやく最近、世界中で発表されている論文で認められてきたことだ。更に、1000倍もダメージを少なく見積もってものだから、0.1mSVだったものが、実質的には 100mSVと同じダメージを加えているのだ。」
これらの核融合生成物は、化学的にフィルタすることってできるんですか?
S 博士「完全には無理だ。中空糸フィルタやイオン交換樹脂など、どんなにテクノロジーが進化しようと、完璧なフィルタなど存在しない。例えば、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンなどの希ガスは、化学的にフィルタすることはできない。トリチウムなども水分と同じような性質なので、なかなかフィルタできない。モニタリングは、結局、役割を果たしていないのだ。自然界はストロンチウム90やヨウ素131をつくらないから、自然放射能と比べるのはおかしい。更に、X線などは刺激が短か過ぎる。だから、安全だと思っていた放出量が、実はそうではなかったということだ。」
それでも、核実験からの残量放射能が減って来ていて、今では食物に含まれている値も示していますが。
S 博士「良いかい。基本的に原子力発電所が自ら検出して発表しているデータはそこまで信用しない方が良い。電力の生産があがるほど、放射性物質の排出はぜったいに免れられないのだ。それに、原子力発電所がどのくらい排出しているかを心配したり論議するよりも、人間にどのくらい入って来ているのかを検出する方がずっと早いのだ。私たちの90年代の研究で分かったことは、アメリカで原子力発電所の近くに住んでいる子供たちの乳歯から検出されたストロンチウム90 は、かつての核実験の時代と同じくらい高くなってきているということだ。これは原子力発電所が放射性物質を出し続けている確固たる証拠だ。このプロジェクトもアメリカの政府がデータを公表しなくなったために、独自で始めたのだ。ストロンチウム90の値は、すでに胎内で蓄積されていることが分かることと、ストロンチウム以外の放射性物質も入って来ていることを裏付けるから大事な訳だ。これらはすべて、いわゆる通常の運転で起きていることだよ。」
それは日本にも言えることですか。
S 博士「繰り返すが、日本の八割はアメリカ製の原子力発電所であるからして、まず間違いないだろう。原子力発電所の放射性ガスや放射性物質の粒子は、日本の美しい山脈に降り注ぎ、それがきれいな湧き水に混入して、田んぼや畑、飲み水に入って行ってしまうのだよ。風がどっちに吹いていようが関係なく、これがいちばん起こりうる被ばくの方法で、私はこれが日本でがんが急増している要因のひとつだと考えている。ちなみに、ロレン・モレーが日本で集めた乳歯のサンプルからもストロンチウム90が充分なレベル検出されている。これはどこで産まれたか、どこで育ったかによって大きく異なるし、もっと大規模な研究が必要だが、アメリカと同じような状況であると予想される。小児がんを主に、健康な発育が妨げられる確率が数割は高くなるということだ。もちろん、放射性物質による害は成人にもあてはまることだ。」
そうなんですか。
S 博士「ついでに、もう一つ重大な話をしよう。ストロンチウム90から出来るのが、イットリウム90だ。これは骨じゃなくて、すい臓に集中する。すい臓というのは、糖尿をおさえるホルモン、インスリンを分泌しているから、ここに異常が出ると糖尿病になる。世界中で、糖尿病が急増しているのは知ってるね。日本は、すでに人口の割合から言えば、アメリカの二倍もいる。そのアメリカだって、イギリスより率が高いのだ。日本では、戦後から現在にかけて、すい臓がんが 12倍にもふくれあがっている。50年代の終わりにドイツの動物実験で発見されたのが、ストロンチウム90が電子を放出してイットリウム90になると、骨から肺、心臓、生殖器などに移動するのだが、すい臓に最も高い集中見られたのだ。インスリンがうまく生産されないようになって、血糖値が上がってしまうのだ。今までは放射能が糖尿病と繋がっているなんてまったく認知されていないのだ。これで分かっただろう、国際放射線防護委員会(ICRP)は、当初、放射能の影響として、特定のがんと奇形児くらいしか認めなかったのだ。未熟児、乳児の死亡や、肺、心臓、すい臓、これらの部位への影響はすべて無視されてきたのだ。」
はい。
S 博士「民間エネルギーの最初の原子力発電所は、ピッツバーグに57年に、私が15年間勤めたWestinghouse社によって建てられた。私たちは、汚い石炭の発電所よりも、安くて、きれいなエネルギーだと思っていた。微量の放射性物質が逃げても、大したことないと思っていたのだが、それは大間違いだった。これと同じ原子炉が、今でも日本でたくさん稼働している。70年代にカナダのエイブラム・ペトカウ (Abram Petkau) 博士が発見した、低レベル放射能によるフリーラジカルの影響を、未だに反映できていないのだ。フリーラジカルの性質を分かっていなかったのと、放射線量と人体への影響が比例的な関係だと勘違いしていたのだ。低レベルで起きる様々なことは、ヒロシマとナガサキの生存者を調べただけでは、まったく予期できなかったのは当然のことだ。」
はい。
S 博士「だから、原爆の生存者や、X線のデータによって計算された国際的な許容量はまったく間違っている。これは、原子力発電所が大規模に建てられるようになって、何十年も後に分かったことだが、誰もその過ちを認めることが出来ずに、今日まで来てしまった。その理由の一つとして、すでにウラン鉱山に巨額の投資がされてしまっていたことがあるだろう。だから、ウランの利益を受けている人たちは、過ちを認めないどころか、それを絶対に隠したいのだ。ウランは核分裂以外には役割がないから、それがただの粉末のゴミになることを本気で危惧しているのだ。世界中の政府や企業、イギリスの皇室などが所有しているウランは、原子力発電所が他の燃料で動くようになったら困るのだ。」
日本企業もかなり先行投資していますよね。他の燃料と言いますと?
S 博士「天然ガスだ。天然ガス発電に切り替えれば、なんと、設備投資の7〜8割は無駄にならない。天然ガスはあと数十年は持つと言われているから、その間に自然エネルギーを開発すれば良いのだ。コロラド州のフォート・セイント・ブレイン (Fort St. Vrain) は、すでにこの成功例だ。原子炉だけを閉じて、天然ガス用のボイラーを横につくって、タービンの建物など、ほかのものはそっくりそのまま使えたのだ。そう、原子力はお湯を沸かしているだけだからね。原子炉の中の水も放射能を持っているために、配管が錆びて出てくる鉄、マンガン、コバルトなどにも中性子がぶつかって、普通の元素まで放射性になって大気に飛び出てしまうのだよ。これが体内にも必要な物質の場合、放射性の鉄分だって血液に入ってしまう訳だ。」
原子炉を解体しただけで、その付近は大丈夫なんですか?
S 博士「そうだ。その証拠にコロラド州は、あらゆるがん、小児がんの率が全米でいちばん低いのだ。解体すれば、新しい核分裂や放射性ガスを止めれば、燃料自体は、まだ残っているが隔離することはできる。それが素晴らしい点だ。もちろん、完全に廃棄するにはたいへんなコストがかかるよ。これはもっと大変な問題だ。だから、原子力産業は、古くなった発電所を解体する巨額のコストを考えていなくて、将来のコストを少なく見積もりすぎているのが、大問題だ。でも、運転を止めることさえすれば、せめて新しい放射性ガスが発生することは抑えられるのだからね。」
環境的には、それがいちばん良い訳ですね。
S 博士「とりあえずは、だ。その代わり、何万年、何億年と放射能を持つ核廃棄物をどうするのかを、まだ誰も解決できていない。何故かというと、長い時間が経つと、地下に埋めようが、山に埋めようが、放射線が缶から漏れ始めることが分かっているからだ。缶が空気中のバクテリアに侵されて行くからだ。そうすれば、今度は地下水が汚染される。」
はい。
S 博士「環境的な問題はそれにとどまらない。日本のロッカショで起きようとしていることは、全国の55基分の廃棄物を集めるから、どうがんばっても大量の放射性物質を大気と海に捨てることになるだろう。そうすれば魚も死ぬし、近辺の入江に生息する貝や生物が放射性物質を吸い込んで、人間と同じように免疫力が低下して行って、死んでしまうのだ。60年代に核実験が盛んに行われていた時期も、北大西洋では、魚が激減して、核実験が終わったあと、一気に元に戻った。決して乱獲のせいなどではなかったのだ。このことは、今でも世界中の原子力発電所の近くで起きている。クジラやイルカも、川に流した放射性物質によって、みんな影響されているのだ。」
何度も言いますが、それでも原子力発電所は、海への放出をフィルタして、ちゃんとモニタしていると言いますが。
S 博士「だから、そんなフィルタがあれば、固形の廃棄物の心配だけで済むから嬉しいよ。でも現実的には、一部の放射性物質しか取り除けないことは、実績で分かっているのだ。しかも、事故や人為的ミスの可能性も計算にいれてなくても、この状況だ。過去には放出しなくて済んだ放射性物質も、大量にあった訳だ。スリーマイル、チェルノブイリ、これらは、世界中に多大なるインパクトを与えたのだ。我々はチェルノブイリが起きた翌年のアメリカでも、統計データとEPA によるストロンチウム、ヨウ素、セシウムの測定量から、数万人規模で過剰な死者が出たと考えている。」
そうなんですか。
S 博士「特に日本の場合は、地震国だということを忘れては行けない。日本の面積にあれだけの原子炉が集中していることと、ロッカショの再処理工場の最大の問題点は、さきほど言ったように全国の燃料棒を集めてプールにいれていることだ。これらは、本当に強い、本当に高レベルの廃棄物で、なんかの拍子に、このプールの冷却水にもしものことがあったら、大惨事では済まないことになるだろう。」
、、、質問を変えます。
なぜ、人間はそのような強い放射性物質を扱うことになったのでしょうか?
S 博士「まず、自然の中で人間が経験してきた放射性物質は、カリウム40だけだ。これは体内に入っても、骨など、どこにも集中しないし、放射線量はストロンチウム90より多くても、体に蓄積もされないから、割とかんたんに体から抜けて行くのだ。地球ができたときに、ウランやたくさんの放射性物質ができたが、どれもストロンチウム90のようにカルシウムに化けて、核分裂生成物が体内に蓄積されるようなことはなかった。一部のアフリカの地下の鉱山の例外をのぞいて、核分裂の連鎖反応は自然ではぜったい起きないのだ。」
(註:20億年前に西アフリカにあるガボンのウラン鉱山で自然核分裂があったとされる)
はい。
S 博士「例えば、普通の水の中にある水素は、宇宙線の影響でトリチウムになることがある。トリチウムも、特定の部位で濃縮されない。人間は、自然放射線の中で進化してきたが、これらも体に蓄積はされなかったし、フリーラジカルを長い期間にわたって体内に取り込むこともなかったのだ。海の中に微量に存在するウランも同じことだ。1938年に人間が核分裂を発見してから、すべてが変わってしまったのだ。」
分かりました。
では、日本は島国ですから、海の汚染についてもう少し詳しく教えてください。
S 博士「海を守ることは、とても大事なトピックだ。我々が予測できなかったエピソードをもう一つ、教えてあげよう。昔、科学肥料が海に流れ込んで、藻が異常発生すると、魚貝類の酸素を奪ってしまうと疑われていた。その結果、酸欠になった魚や貝が死んでしまう訳だ。ミシシッピ川が流れ込むメキシコ湾で藻が大量発生したときは、窒素、つまり酸化窒素を含む化学肥料が原因だと思われていた。でも最近、新たに分かったことは、キセノンやクリプトンなどの放射性ガスのエネルギーが、大気の酸素と窒素を反応させて、酸化窒素をつくることが分かったのだ。雨が海に運んでくる土砂が化学肥料と同じ役割を果たして、間接的に魚の酸素を奪ってしまうのだよ。この容量で、原子力発電所は、酸化窒素だけでなく、酸素原子が三つくっついたオゾンもつくっている。つまり、原子力発電所が藻の激増に繋がっていることも、誰も予想できなかったことの一例だ。」
そうですね。
S 博士「だから、発電所が出す液体廃棄物は、始めは誰もが海は広いし、とても深いので、人間社会にはまったく影響がないと計算していた。しかし、先ほどから言っているように、微量だから大丈夫ということは決して有り得ない。また、Busby氏らの発見が論文で細かく発表されたように、海に放出した放射性物質は、必ず波に乗って浜に返ってくる。イギリス、ウェールズ、スコットランドの原子力発電所付近の砂浜でも、このことが確認されたのだ。日本でもきっと同じことが起きているだろう。海水で薄まると期待していた放射性物質が、波に運ばれて返って来て、それが雨にも混ざって、また土の中にも入ってくるのだ。」
それでも、魚からは放射性物質が検出されてないと言われますが。
S 博士「だから、まずそれは安全値がニ、三桁ずれたままだからだよ。もちろん遠洋の魚の方が、放射線を受ける量が少ないし、日本は遠洋漁業が多いから、まだ安全な方かもしれない。それでも、50年前の安全基準が残っていることが問題だ。たいていのガイガー・カウンターは分かり易いガンマ線を計っているだけで、アルファ線やベータ線のことは計れないので、これにはもっと複雑な機械が必要なのだ。」
そうなんですか。
S 博士「ガイガー・カウンターは、砂浜にたまったガンマ線を読むことはできるが、魚のアルファ線やベータ線などの正確に計るには、魚の肉や骨をとって、化学的に調べる必要がある。これには大変な技術と計算力が必要になるのだよ。化学的に分離させた液体を、放射線検出用のシンチレーション計数管に通すのだから。つまり、骨にたまるストロンチウム90のように、いちばん強力で、いちばん厄介な放射性物質ほど、かんたんな計器では探知できないのだ。」
はあ。
S博士「分かったかい?原子力発電所ができてから30年後に、ペトカウ氏が発表して初めて分かったことがあったように、知らなかったことが多過ぎたのだ。ひとつの細胞が放射線を受けると、周りの細胞が影響を受ける『隣人効果 (Neighboring Effect) 』のことも知らなかったし、いろいろなことだよ。我々は、世界を壊してしまうような原子爆弾をつくってしまった償いとして、原子力発電を急ぎすぎたのだ。」
どういうことですか?
S 博士「核分裂が発見されたとき、多くの物理学者は大学の研究室を出て、マンハッタン・プロジェクトに参加した。当時はヒットラーが世界的な脅威だったからだ。ドイツに原爆を渡してはいけない、と。同じことがイギリス、フランス、ロシアでも起きた。そのうちに、スターリンが出て来て、今度は冷戦が始まって、多くの物理学者は核戦争を避けるためにと、核爆弾の開発に一生を捧げたのだよ。と同時に、そんな軍事目的に利用されただけで死ぬのは良心が耐えられなかったのだろう、アイゼンハワー大統領が提唱した『平和な核利用』のアイディアに皆が飛びついたんだ。アイゼンハワーは、『クリーンな原子力』をつくる原子力発電所を世界中に売り込もうと躍起になって、物理学者はそれを喜んでその手助けをした。ヒロシマとナガサキで起きたことや、人類を滅亡させる核兵器をつくってしまったことへの罪悪感のためにね。」
とても興味深いです。
でも彼らは、放射能の影響を予知できなかったのですか?
S 博士「そのときは、本当に経験とデータが少なかった。いろいろな不幸が重なって、今の状況をつくってしまったのだよ。多くの人は、核爆弾がないと不安でしょうがなかった。私の孫みたいに、お気に入りの布団がないと眠れないのと一緒でね。共産主義が世界を食い尽くしてまうのを止めるには、核爆弾が必要だと本気で思ってたのだ。これが核の軍拡の原因であり、それに乗っかって、アイゼンハワーがきれいなエネルギー政策と称して原子力を勧めたものだから、誰もが信じきってしまった。日本の場合は、国民がたいへん丁寧できれい好きだから、モクモクと汚い煙が出る発電所と違って原子力は魅力的だったに違いない。」
では、これだけの知識が今あって、それを知っている専門家も世界中にいると思うんですけど、根本的なところで変えて行けると思いますか?
S 博士「これが実は難しいのだ。何故かと言うと、大学の研究室などのリサーチのほとんどは、政府の補助金で成り立っているからだ。その政府が、原子力発電はクリーンだと信じ切っていたものだから、今になって過ちを認めたくないのだ。例えば最近でも、コネチカット州の原子力発電所で問題があったのが分かっているにも関わらず、微量だから問題ない、と繰り返すだけだ。EPA(米環境庁)も、原子力産業を守ろうと、必死になっているのだ。石炭による発電が産むスモッグや水銀と違って、クリーンなエネルギーだと言う、昔の謳い文句そのままだ。でも水銀では、爆弾はつくれない。分かるかい。」
それは、今だと強く言われてますよね。二酸化炭素を排出しないから良いんだと。
S博士「それはいつの時代も言われてることだが、でも、本当は、ウラン鉱山の採掘、ウランの運搬、ウランの濃縮、多くのエネルギーを使って、石炭を使ってウランも濃縮すれば、世界のCO2排出量は、原子力発電所を増やすことで解決できないことは、誰の目にも明らかだ。その上に、今知られているウランの埋蔵量もたった数十年でなくなってしまうことを、誰も気にとめていないようだ。現在では、石炭が排出するガスを地中に送り返して岩に変えることによって、CO2の排出を防ぐ方法も出て来ているのだ。」
石炭が見直されてるのは聞いたことあります。
S 博士「その他にも海洋エネルギーや、地熱エネルギー、風力、太陽、沢山方法はあるし、水素だけでもさまざまな活用法がある。これを原子力産業がひた隠しにしているのだ。ウランに莫大な投資している人たちが、新しい発電方法の浸透を防いでいるばかりか、健康への害も隠している。私が何十年も経験して来たことだが、体質的にモラルを忘れた産業だと言わざるを得ない。」
一般の人へのメッセージとして、自分の健康を守るには何をおすすめしますか?
S 博士「アメリカでは記録を公表することも止めてしまったので忘れられてしまっているのだが、原子力発電所付近の農場がつくった牛乳は、まず飲まない方が良いだろう。また飲み水は、逆浸透装置を使えば、ほとんどの重い放射性物質はフィルタすることができる。本当は行政がやれば良いことなのだが、コストが高過ぎるのだ。」
それでは、今日はここまでにします。ありがとうございました!
S博士「ありがとう。ほかに質問があれば、何でもきいてくれ。」
スターングラス博士のまとめ
http://www.e22.com/atom/page09.htm
日本人に何が起きているのか?
http://www.e22.com/atom/page10.htm
発表日 | 2007.04.24 情報源 | ドイツ サブカテゴリ | 環境一般 >> 調査/研究
ドイツ 新たな研究が完成「原子力発電は安くもなく、気候にも配慮していない」
ドイツ連邦環境省の委託を受け、エコ研究所は、あらゆる発電方式について、それぞれ温室効果ガス排出総量を算出する研究を行った。概要は以下のとおり。
●ドイツの原子力発電所は、キロワット時あたりCO2を31〜61g排出する(ウランの生産地によって異なる)。一方、風力発電のCO2排出量は23g、水力は39gと少ない。太陽光発電については89gと若干多い。
●電力需要と熱需要を考慮すると、石油暖房と原子力発電の組み合わせではCO2排出量は772g、分散型ガスコジェンレーションでは747g。また、バイオマス分散型コジェネレーションでは228gにとどまる。
●発電コストは、新しい原子力発電所については平均的な金額だが、風力発電はこれを上回る。もっとも、外部費用は加算されておらず、放射性廃棄物の費用は全く加算されていない。
研究結果に関して、ガブリエル環境大臣は、「原子力発電は安く、CO2を排出しないという神話は一掃すべきだ。原子力発電は、気候保護対策の選択肢とはならない」とコメントした。【ドイツ連邦環境省】 記事に含まれる環境用語
http://www.eic.or.jp/news/?act=view&word=&category=&oversea=1&serial=15941
http://www.nhk.or.jp/news/2007/03/27/d20070327000005.html から転載。
地震 原発建設時の想定上回る
能登半島地震は志賀原発からわずか18キロの場所で発生し、地震の規模を示すマグニチュードは6.9と推定されています。
北陸電力によりますと、志賀原発1号機を作るときの耐震性の評価では、今回の震源付近で起きると想定した地震の規模は、4本の活断層から最大でマグニチュード6.6で、今回の6.9はこの想定を上回っていました。
これについて、原発の耐震に詳しい東北大学の大竹政和名誉教授は「原発で実際に観測された揺れは設計基準を下回っていたが、原発のすぐ近くで想定外の地震が起きた以上、この地震について詳しく調べて、しっかりと安全性を確認すべきだ」と指摘しています。
原発の耐震性をめぐっては、去年9月に25年ぶりに耐震指針が見直されたことを受けて、各電力会社が活断層などの再評価を進めています。北陸電力では、今回の地震が起きた海域の活断層などについて詳しく調べることにしています。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-12-22/2006122202_02_0.html から転載。
2006年12月22日(金)「しんぶん赤旗」
「会社員」実はメーカー社長
原発タウンミーティングでも「やらせ」
吉井議員が追及
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(写真省略)質問する吉井英勝議員=21日、衆院内閣委
政府の調査報告で問題なしとされた原子力タウンミーティングでも、身分を隠した原発推進側の発言が大勢を占め、露骨な世論誘導が行われていた―日本共産党の吉井英勝議員は二十一日の衆院内閣委員会でこうした事実を示し、タウンミーティングについてさらなる調査と全容の解明を求めました。
吉井氏がとりあげたのは二〇〇三年八月三十一日に福井市で開かれた「原子力との共生タウンミーティング」です。地元財界がつくる「福井県環境・エネルギー懇話会」と政府の共催でした。
吉井氏は「最初に発言した人物は会社員と名乗っているが、高速炉エンジニアリングという原発メーカーの社長だ」と暴露。ほかの発言者も一人をのぞき原発推進・賛成ばかりで、共催団体メンバーの経営団体役員だと明らかにしました。
内閣府の山本信一郎大臣官房官房長は「(発言者が)どういう経歴か関知していない」と無責任な答弁に終始しました。
吉井氏は「一回一千万円の税金を使った大規模な世論誘導というべきもの。国民の世論を聞くという看板と実態はまったく違った」と批判し、「共催団体による発言依頼や参加依頼も含めて抜本的な調査のやり直しをすべきだ」と迫り、資料の公開を求めました。
http://www.bund.org/interview/20061205-1.htm
原発劣化ウラン
低レベル放射能が世界中に拡散している
米科学者 ローレン・モレさんに聞く
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ローレン・モレ
(Leuren Moret)
米国の地質学者。国際的な放射能汚染の専門家。カリフォルニア州バークレー市の環境委員。1980年代にローレンス・リバモア核兵器研究所でヤッカマウンテン高レベル核廃棄物貯蔵所プロジェクトに参加。1991年プロジェクトとリバモア研究所の科学的不正を内部告発し話題を呼んだ。
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各国政府や原子力を推進する側の関係者は、放射能は微量であれば人間に影響はないと主張する。しかし一方、微量でも健康に影響があると指摘する研究者が増えている。そのひとりである放射能汚染の専門家ローレン・モレさんに聞いた。
劣化ウランのナノ微粒子が世界中に拡散
――この間の劣化ウラン研究で明らかになったことはありますか。
★私は大気圏内の浮遊塵の動態を4年間研究してきました。その結果、核実験や原発によって放出された放射能の塵が、世界中に拡散していると確信しました。
米国はアメリカ西海岸のネバダ核実験場で1000回以上の核実験をしました。フランスはサハラ砂漠で、中国はゴビ砂漠で核実験をしました。この3箇所の核実験場で発生する砂嵐には放射性物質が大量に含まれており、それが世界中にばらまかれてきたのです。
近年は劣化ウラン兵器の放射能塵が加わりました。劣化ウラン兵器は使用時に燃焼してガス化します。金属はガス化すると微粒子になるのですが、劣化ウランの場合は高温で燃焼するのでほとんどがナノ微粒子になります。ナノ微粒子は粒子径(直径)が1から100ナノメートル(ナノメートルは10億分の1メートル)程度のものを指します。ウイルスと同じないしはそれよりさらに小さいものです。ナノ微粒子となった劣化ウランは浮遊して世界中に拡散します。
このように私は劣化ウランによる放射能の塵が世界中に拡散していると主張してきました。しかし裏付けとなる計測データは何もありませんでした。各国政府は大気中の放射性物質の濃度を計測しているにも関わらず、それを公表せずに隠してきたからです。けれども計測データが今年の3月、イギリスで明らかとなりました。
イギリスにクリス・バズビー博士という科学者がいます。独立系の科学者ですが、イギリス政府の低レベル放射能の委員会やEUの低レベル放射能の委員会に所属しており信頼できる科学者です。そのバズビー博士が、情報公開法によってイギリスの核兵器工場の放射線モニターのデータを公開させたのです。
図1 大気中ウラン濃度測定値(イギリス・オールダーマストン核兵器工場) 図1はその核兵器工場の計測データです。1998年から2003年までのウランの計測値ですが非常に高い値を示している部分があります。2001年のアフガニスタンのトラボラ攻撃の時と、2003年3月のイラク戦争開戦時です。
劣化ウランのナノ微粒子はアフガニスタンやイラクから、7日から9日間でイギリスに到達します。計測値のピークは劣化ウラン兵器の使用状況とぴったり一致します。
トラボラ攻撃の際には放射能の濃度は1000ナノベクレルに到達しています。核兵器工場は原発と同じように放射能漏れをチェックしており、1000ナノベクレルを超えたら政府に報告しなければいけない義務があります。本来ならば警戒しなければいけない値ですが、イラク戦争開戦時にはその2倍の濃度になっています。
バズビーさんの計算によると、モニタリングしているところから130キロ内に住んでいる人は、2週間で230万個の劣化ウラン粒子を吸い込んだことになります。1個の粒子だけでガンを起こせるのですから、その影響の大きさが分かると思います。
日本では1991年以降にガンの死亡率が急激に上昇しています。これは劣化ウラン兵器による放射能の影響と考えられます。劣化ウラン弾による放射能の拡散は、高度3000メートル程度の範囲内で起き、2ヶ月ほどでほとんどが地上に落ちます。中東で使用された劣化ウラン弾の放射能は、砂嵐などで世界中に拡散したのです。
放射能がすい臓に蓄積増加する糖尿病
――劣化ウランなどの低レベル放射能は人体にどんな影響を与えているのですか。
★クリス・バズビー博士を含めた多くの科学者の研究によって、核爆発よりも低レベル放射能のゆっくりとした曝露の方が、生命にとってはダメージが大きいことが分かってきました。最近、注目されているのは糖尿病との関連です。
糖尿病は典型的な生活習慣病とされ、発症が増加したのは食べ物の変化のせいだとされています。しかし実は放射能の影響が非常に大きいのです。
核分裂生成物のひとつにイットリウム90がありますが、これが体内に入るとすい臓に集中します。すい臓は糖尿をおさえるホルモン・インスリンを分泌しており、この機能が被曝することで異常をきたすのです。2ヶ月の被曝で糖尿病になることは、すでに動物実験で確認されています。
専門家は糖尿病と放射能との関連性については1980年代から知っていましたが、データを公開しませんでした。私は糖尿病の発症率を地域ごとにマッピングしました。結果、糖尿病の発症地域と放射性降下物の分布地域とがぴったり一致したのです。
図2 糖尿病発症数および原発稼働率(アメリカ・イリノイ州) 糖尿病の地域別発症率を見ると北アメリカ大陸、旧ソ連地域、日本、オーストラリア、南アフリカあたりが高くなっています。これらの地域では核実験、原発、劣化ウランの影響が大きいと考えられます。アメリカでは特にメキシコ湾岸地域が異常に高くなっていますが、これは中東で使用した劣化ウランの影響だと考えられます。
アメリカの糖尿病は1980年から90年には18%上昇しました。2000年までを見ると137%の上昇です。特に96年から97年に飛躍的に増えています。アメリカ全体でも、ニューヨークでも同様の結果が現れています。糖尿病が上昇した時期は、クリントン大統領がイラクで絨毯爆撃をした時と重なります。
2006年6月11日のアメリカン・ニュース・トゥデイという医学関係者向けの新聞記事は、今後20年間でアメリカ人の糖尿病患者が今の3000万人から2億3000万人に増加すると言っています。アメリカの総人口は3億人ですから、とんでもない数字です。糖尿病の増大はアメリカだけでなく、世界中でも同じように起こるはずです。劣化ウランの塵は世界中に拡散するからです。
私は今年の3月、日本の厚生労働省の人口動態統計を入手して、糖尿病による死亡率の数字をグラフにしてみました。グラフにすると核実験時や劣化ウラン兵器の使用時における上昇がはっきりと分かりました。
私は友人に言いました。「こんなことは誰も言っていないし、信じられないかもしれないが、糖尿病の世界的な流行は放射能と関係しているとしか思えない」。友人はコンピュータに糖尿病と放射能とを入れて検索しました。その結果、250万もヒットしたのです。私は、科学者が放射能と糖尿病の関連性を知っていたはずだと考えて研究を始めました。広島の原爆投下後、日本でも糖尿病が大変増えていますから、専門家は放射能と糖尿病の関係を知っていたはずです。
研究していくとマンハッタン・プロジェクトを実施したローレンス・バークレイ研究所の1963年の内部レポートが、糖尿病と放射能との関連について報告していることが分かりました。糖尿病にかかっている人の血液中の放射性物質を研究していたのです。
この報告を出した研究者を私は知っていましたので、彼の友人を経由して聞いてみました。しかしその研究者は「レポートのことは忘れた。もうコピーもなくした。覚えていない」ということでした。
今、ヨーロッパでも糖尿病は大変増加しています。チェルノブイリからの放射能の影響もあるでしょうが、原発と劣化ウラン兵器の汚染もあるのです。その結果、糖尿病が増加し、医療費が増え、財政は破綻に瀕しています。ヨーロッパ議会の決議案では「糖尿病を防ぐためにもっと健康的なライフ・スタイルに変えましょう」「あなたが悪いのよ。食べるものが悪いからよ」と言っています。しかし本当の理由は食生活ではないのです。
DUと原発が人類をむしばむ
――原発と劣化ウランは非常に深刻な影響を与えているということですね。
★既に地球では2つの秘密の核戦争が始まっているのです。ひとつは原発、もうひとつは劣化ウラン兵器です。
劣化ウラン兵器は1943年にマンハッタン計画の中で開発されました。枯れ葉剤も原爆も同時期に開発されました。その時アメリカの科学者は劣化ウランと枯れ葉剤はひどすぎる兵器だと考えました。でも原爆はまだいいと考えたのです。私も劣化ウランは原爆よりも悪いと思います。かつて私と一緒に核開発に携わった元同僚も同じことを言っていました。
核兵器は上空の高いところで一瞬にして爆発し、放射能は大気圏に広がりながら徐々に減衰していきます。しかし原発や劣化ウラン兵器から放出される低レベル放射能は、その影響が長期間に渡って続きます。
原発からは、毎日新たな核分裂生成物が出てきます。いってみれば毎日、隣で原爆が爆発しているようなものです。原発はゆっくりとした核兵器です。原発が6ヶ月稼動すれば、広島に落とされた原爆と同じ量の放射能が放出されます。
低レベル放射能は脳をダメにし、体の機能を損ないます。遺伝子を傷つけ、それが次の世代に受け継がれていきます。ガンも増えます。
原発の放出する低レベル放射能は日本社会を破壊しています。今の日本では不妊率が非常に高く、健康な赤ちゃんが産まれなくなっています。低体重児もたいへん多い。低体重児は健康に成長できない場合が多いのです。原発は経済面や生産性への影響も含めて、日本という国土を汚染しています。
今後六ヶ所村の核燃料再処理施設がフル稼働すれば、日本に新たな365基の原発を作ったのと同じだけの放射能が出ます。日本での放射能汚染はさらに広がります。
このような危険な原発を日本に作ることを誰が了解したのでしょうか。中曽根元首相が若い時に了解したという話があります。しかし私は、政府の人たちが知らない陰の動きがあると考えます。諜報機関と彼らが一緒に働いているのではないでしょうか。これは自分の国を裏切っている行為にほかなりません。
原発・劣化ウランという2つの核戦争の背後にはロンドン・マネー・パワーがあります。ロンドン・マネー・パワーとはロンドンを中心に活動する大富豪の銀行家たちです。彼等は表舞台には絶対に出ないのですが、一番利益を得ている人たちです。
ロンドン・マネー・パワーにとって、日本が中国・韓国・インドと緊密に協力して経済圏を築くことは大変な脅威です。それを防ぐために日本に原発を作って、日本人をだめにしてしまおうとしているのです。
私は「中東の戦場から英国の空気で計測される劣化ウラン」という記事をインターネットに掲載していますが、その記事には「クイーンズ・デス・スター」というタイトルをつけています(http://www.mindfully.org/Nucs/2006/DU-Europe-Moret26feb06.htm)。クイーンというのはエリザベス女王です。デス・スター(死の星)というのは、エリザベス女王を中心とするロイヤル・ファミリーが世界のほとんどのウラン鉱山を所有していることを意味します。このウラン鉱山を経営しているのはロスチャイルドです。
ロンドン・マネー・パワーの意向に添って、ブッシュとチェイニーがインド、中国、韓国、日本に一生懸命原発を売り込んでいます。オーストラリアのジョン・ハワード首相はウランを売り込んでいます。
一方、劣化ウランは中東で使用されています。現在はイラクとアフガニスタンです。イラクとアフガニスタンを中心に劣化ウランの影響が強く出る1000キロの円を描くと、2つの円が重なるところにイランとロシアの産油地帯があります。このようにして石油を狙ったもう一つの核戦争が始まっているのです。
日本は脱原発を真剣に考えたら良いのでは
――日本では北朝鮮の核実験を契機に、核武装の議論も出ていますが。
★1968年のワシントン・ポストの記事は、「日本は原爆の製造能力を持っている」と書いています。核兵器開発計画の研究は大阪大学で秘密にやっています。安倍政権がその成果をみなさんに紹介するでしょう。北朝鮮の核実験は問題ではありません。恐喝しているだけです。
今、日本にとって必要なことは、第一に既存の原発を天然ガス発電所に変えることです。タービンなどの施設はそのまま利用して、熱源を原子力から天然ガスに変えるだけでいいのです。非常に簡単で非常に安価です。
第二にすべての町や村が、自分達で自身の電力会社を持つことです。岩手県葛巻町ではすべてのエネルギーを自然エネルギーでまかなっています。人口8000人の小さな自治体ですが、バイオマス、太陽光、風力によって町が消費する電力の1・8倍をつくり、余剰分を販売しています。こうしたことが非常に重要です。
(インタビューの際、通訳をきくちゆみさんにお願いしました)
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http://www.bund.org/interview/20061205-1.htm
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核管理や原子力事故の影響を研究する米国の物理学者、エドウィン・ライマン博士が23日、県庁を訪れ、玄海原発3号機(東松浦郡玄海町)のプルサーマル計画について「安全上の問題がある」と指摘。県に再考を求めた。
核拡散防止に取り組むライマン博士は、青森県六ケ所村での使用済み核燃料再処理工場稼働を止めようと来日。招請したからつ環境ネットワークや県平和運動センターのメンバーらと訪問した。計画に関し「事故の可能性を高め、被害も大きくする恐れがある」と指摘した論文を提出。「県が同意すれば危険なプルトニウムを増やすことになり、世界の核バランスも不安定になる」と訴えた。同行した2団体は「県の安全見解が誤りだという指摘であり、検討し直すべき」と要求。石倉敏則県くらし環境本部副本部長は「新たな知見が出れば検討する方針であり、精査して回答する」と答えた。ライマン博士は県議会も訪ね、慎重な審議を要請した。
02月24日
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NIFのターゲットチェンバー完成を祝う式典
(ローレンス・リバモア研究所より)
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050704_iter2/
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050704_iter2/index1.html
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050704_iter2/index2.html
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050704_iter2/index3.html
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050704_iter2/index4.html
2005年7月4日
ここにある1枚の写真は、ついこの間までITER計画を中心的に引っぱってきたアメリカがなぜ99年に突然降りてしまったのか、その背景を示している。
日々大変貌する核融合研究の最前線
いま核融合研究の世界は、とんでもない大変貌をきたしているところなのだが、文藝春秋に書いた私の記事を読まなかった人たちには、このたびのITER日本誘致の失敗が本当のところ何に起因していたのか、いまだによくわからないはずである。
本当の理由がわからないと、どれほどバカげたことが信じられてしまうか、その典型のような記事がしばらく前の東奥日報にでていた。
日本にITERが誘致された場合、その建設予定地として筆頭にあげられていたのは青森県の「むつ小川原地区」だった。そのため、青森県は県知事以下の全関係者が「県ITER誘致推進会議」で誘致活動をこの何年か繰り広げてきた。この推進会議の特別顧問になったのが森茂・元日本原子力研究所副理事長で、この人が次のような過激な表現で、国際交渉に当たっている文部科学省に奮起を促した。
森氏は国内の核融合研究の先駆者の一人で、現在は六ケ所村にある環境科学技術研究所の顧問。文科省幹部の講演後に発言を求めた森氏は、フランス大統領が誘致に自信を示す発言を繰り返していることが我慢ならない様子で「日本が一流国になるのを抑えようというのが彼らの一貫した外交政策。日本が科学技術でトップに立つのを何とか阻止しようとしている」と強調。
原研時代に日米の共同研究で核融合の中心的研究を米国に奪われた逸話も紹介し、「もしフランスに建設されるなら、まさか凱旋門を爆破するわけにはいかないから、凱旋門で焼身自殺でもしてやろうか、というぐらいの気持ちでいる。誘致には日本のステータス(国際的地位)がかかっている、という意識で交渉担当者は頑張ってほしい」と、げきを飛ばした。
いかに地元に迎合するためとはいえ、これほどバカげた意見を公衆の面前で堂々開陳する先生がいるとは、驚きである。
こういうバカげた意見に惑わされぬように、先の文春の記事(文藝春秋2005年3月号「「日本の敗北 核融合と公共事業」)のエッセンス部分を、次に引用しておく。(引用にあたっては、よりわかりやすくするため補注的加筆をかなり加え、図面もふやした)
この引用にいたる前の部分で、ITERのような巨大トカマク装置の開発にここでさらに数千億円を注ぎこむ前に、クリアにしておくべき研究課題がたくさんあるのではないかということを詳しく論じてきている。以下はその議論のつづきである。
なぜアメリカはトカマクを捨てたか
こういうことをいうのは、いま核融合の世界が大変動をきたしはじめているのに、日本の核融合関係者(研究者も官僚もメディアも)の主流が、井の中のカワズ状態にあって、そのような状況変化を知らないか、知っても直視しようとしないからである。しかし、もういやでもそれを直視せざるを得ない状況が目の前にきている。
何をいいたいのかというと、かつて、常に核融合研究の先端を切って走っていたアメリカが、トカマクを捨てたということである。トカマクを捨てたというより、ITERを捨てたということである。
もともと国際プロジェクトとしてITERを開発するという話は、85年の米ソ首脳会談からはじまった。当然のことながら、計画の初期は、日米欧露の共同プロジェクトで、アメリカが中心にいた。
92年からはじまった設計活動においても、はじめはアメリカが中心だった。それが六年つづいて、最初の設計図ができたところで、突然アメリカが計画から降りてしまったのである(99年)。
最重要国が消えてしまったので、このプロジェクトはあやうく瓦解しかけた。関係者はみな呆然としてしまったが、やがて気を取り直し、残った日欧露を中心に、計画を大幅にスケールダウンした上で(建設費1兆円→5000億円。半径8.1メートル→6.2メートル。出力1.5ギガワット→0.5ギガワット。燃焼時間1000秒→400秒)プロジェクトを再開したのが、いまのITER計画である。
その後、アメリカは四年後の2003年になってITER計画に復帰した。一時はアメリカが降りたことでガックリきていた日本の関係者は、アメリカの復帰ではしゃぎまわったが、実はアメリカの戻り方は本気ではない。現実問題として、ITERのための特別の予算はほとんどついていない。アメリカにはまだ沢山のトカマク研究者がおり、ITERのために走り回っている関係者も多数いることはいるものの、本気で政府資金をドンと投じるとか、かつてのようにITER建設を中心的に引っぱろうとするといったことはまるでしていないのである。
アメリカはいったいどうしてしまったのか。核融合の研究を捨てたのかというと、そうではない。研究の中心的な方向を、トカマクなどの磁気閉じこめ方式から、慣性核融合方式に切り換えたのである。慣性核融合とは何かというと、核融合には二つの方式があって、太陽を模す方式と水爆を模す方式といえる。後者が、慣性核融合である。
このあたりこのまま読んでわかる方は、次のページまで飛んで読みつづけてくださればいいが、このくだりの意味がよくわからないという方は、以下に示す、この同じ論文の少し前のくだりをまず読んでいただくとよい。
核融合そのものは、ある条件をととのえれば、必ず起せることが1920年代からわかっている。核融合はそもそも自然界では日常的に起きている。太陽を燃やしつづけているのは核融合エネルギーだし、あらゆる星の輝きも核融合だ。だから、太陽と同じような条件(超高温、超高圧)を与えれば、必ず人工的な核融合を起すことができる。それを爆弾という形でなしとげたのが水爆だ。水爆は、原爆を爆発させて、それがもたらす超高温、超高圧で核融合の火を点けている。
おとなしい形で核融合エネルギーを取りだせたら、これを発電に利用できるという考えは、原理的には1920年代から提唱されていたが、1952年の水爆実験成功以後、それが現実の研究対象になりはじめた。
当時、原爆をゆっくり燃やす原子力発電がすでに現実化していたから、水爆をゆっくり燃やす核融合発電の発想が生まれるのも当然だった(以下、「核融合」の一語を「核融合発電」の意味にも使う)。
核融合(発電)成功のカギは、原爆以外のマッチで核融合に火を点けることと、これを持続的にゆっくり燃焼させることだ。「持続的にゆっくり」とは、核融合現象を暴走させることなく、途中で火を消すこともなく、完全に人為的なコントロール下におくことだ。
二つの核融合方式
前述のように、核融合の基本的な考え方に二種類ある。一つは太陽を模して核融合を起させる考え、もうひとつは水爆を模して核融合を起させる考えだ。
核融合というのは、いずれにしても、物質のプラズマ状態で起きる。物質はすべて、太陽のような超高温、超高圧下に置かれるとプラズマになってしまう。プラズマというのは、原子から電子がはぎとられ、裸になった原子核が激しくとびまわっている状態をいう。そういう状態でプラズマの密度が高まり、原子核と原子核が接近すると、トンネル現象が起きて、必ず一定の確率で核融合が起きる。核融合というのは、裸の原子核と裸の原子核の間で素粒子の組み換えが起きて別の原子核となる(そのとき前の原子核の内部にためこまれていた膨大なエネルギーが放出される)ことをいう。
以下、原文に戻って、核融合の、水爆を模す方式である慣性核融合の説明をつづける。
慣性核融合は、具体的にいうと、きわめて小さい(米粒よりずっと小さい)水爆を作り、それに強烈なレーザー光線をあてて爆発させて核融合を起すという方式で、別名レーザー核融合ともいう。
この方式を考えだしたのは、水爆の父といわれたエドワード・テラー博士である。テラーは、水爆を作った後、水爆と同じ核融合反応を人間の完全コントロール下で起せば発電できると考えて、核融合発電のアイデアを得た。しかし、 「磁力線でプラズマを閉じこめようとするのは、ゴムバンドでゼリーをつなぎ止めようとするようなものだ」
と考え、磁気閉じ込め路線に未来はないと判断した。その代り、微小な水爆を高頻度で爆発させる慣性核融合方式が有利として、その研究に走った。
慣性核融合方式の研究を中心的にになってきたのは、水爆を作った核兵器研究所、ローレンス・リバモア研究所(テラーが所長だった)である。ここでは、パワーレーザーを多数ならべて、一点に集中させ、そのパワーで核融合を起させる研究が進められてきた。
慣性核融合は、極小とはいえ、水爆を撃って爆発させるわけだから、本質的には水爆実験と同じであり、その実際のプロセスも実験結果も軍事機密扱いされ、外部の人間にはほとんどうかがい知ることができなかった。しかし、着々研究は進み、炉として点火寸前のところまできていたのである。
それだけ研究が進んだのも、現実の水爆の地下核実験を利用して、慣性核融合のためのターゲット(ペレット状の極小水爆)を実験場に多数の測定器とともにならべておいて、ターゲットはどのような構造がいちばんいいか、核融合を起すエネルギーはどう注ぎ込めばいいかといったことを実験で逐一調べ上げたからだといわれている。
同時に本物の水爆の爆発過程も詳細に調べられ、そのデータから、水爆の爆発過程を完全に計算機の中で再現できるシミュレーション・コードを開発した。それを慣性核融合の研究にも利用できるようにしたことが、研究に長足の進歩をとげさせた(水爆実験を何回も繰り返すのと同じ結果が得られるようになった)。
シミュレーション実験でアメリカは点火が確実にできることを確信した。アメリカは、92年に最後の地下核実験を行い、それでシミュレーション・コードの正しさを最終確認した。それ以後アメリカは、水爆を実際に爆発させることなく、爆発寸前で実験を止める臨界前核実験しか行っていない。
それはそこで止めても、後はコンピュータシミュレーションで完全にフォローできる体制ができたからである。それを機にアメリカは一切の核実験を禁止する包括的核実験禁止条約を世界中の国に結ばせる(96年調印)方向に政策を転換した。
それまでアメリカは包括的核実験禁止条約に断固として反対してきた。自分たちの手を縛られたくなかったからだ。核兵器の世界でも絶えず技術革新があり、新しい核兵器を開発したら、実験が欠かせないと考えていたからだ。
しかし、自分たちが完全なシミュレーション・コードを開発したら、自分たちはそれで実験を継続し、他の国を包括的核実験禁止条約で実験できないように縛ってしまえばよい。そうすれば、アメリカが核の秘密を独占できるからである。
同じ頃、アメリカは同じシミュレーション・コードを利用して慣性核融合の点火に確信が持てたので、約2500億円を投じて(その後かなりの追加予算あり)、「国立点火施設」(NIF)という設備を、ローレンス・リバモア研究所の中に作った。
ここで核融合に人類初の点火をするぞという決意と自信がその名前にあらわれている。これが1993年で、最後の核実験の翌年である。
NIFは点火目前
国立点火施設(NIF)とはどのような施設なのか。その全容は巨大なもので、20キロジュールという大型のパワーレーザーを192本もならべて、それをターゲットチェンバーに導き、その中でターゲットを次から次に爆発させていくという設備だ。
冒頭の写真は、そのターゲットチェンバーが完成したのを祝う記念写真で、国家の要人がズラリとならんでいる。この穴の一つひとつにパワーレーザーが入りこんでいく。この記念式典が行われたのが99年。アメリカが突然ITER計画から降りることを表明した年である。日本の関係者が、アメリカが降りた理由がわからず、みなただ呆然としていた時期に、裏側ではこういうことが進行していたのである。
(この項、次回に続く)
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。
著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌—香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
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空耳板に掲載:
六ヶ所村レポート【祝島ホームページ】山口県熊毛郡上関町祝島の住民の訪問記
http://www.asyura2.com/0403/bd34/msg/781.html
島民レポート曰く:
「原発の補助金でいくら町が裕福になっても、上関町民が幸せになれるという保証はどこにもないのである。
むしろ、住民同士の亀裂という点で、もう15年間も大きな不幸を町民に強いてきているのである。
さらに、これからの町おこし、島おこしを考えると、原発の存在はデメリットばかりで、例えば農産物や水産物を売りだそうとしても、「原発」のイメージを払拭することは並大抵の努力ではできない。
何より、そこに住む人たちは、「原発の海」で獲れた魚を食べ続けなければならないのである。
現在では通信ネットワークの発達によって、田舎にいても才能さえあれば十分に仕事がやっていける時代になっているので、何も原発などという厄介者を誘致しなくても、若者の雇用確保や町おこしの道はいろいろと考えられる。」
三菱重工業は少ないエネルギーで元素の種類を変える技術の開発に着手した。元素変換には原子炉や加速器を用いるなど膨大なエネルギーが必要とされてきたが、常圧、セ氏七十度の条件下で元素の変換を確認。放射性廃棄物の無害化や新エネルギーなど幅広い用途に利用できる可能性が広がるとみて、国内外の研究機関との連携にも力を入れる。
パラジウム金属膜の表面にセシウムを付着させ、その膜に重水素を透過させたところ、セシウムがプラセオジウムに変わった。約五十回の実験で元素変換を確認した。
プラセオジウムは希少物質の一つで、「外部から混入したり、実験機の成分が溶け出した可能性などはない」(同社先端技術研究センターの岩村康弘主席研究員)としている。
ストロンチウムという物質がモリブデンに変わる現象も確認済み。同社は確認した現象に関するデータ収集を二〇〇〇年から続けてきたが、このほどリチウムやカーボンなど他の物質にも対象を広げて確認作業を開始した。元素が変わる仕組みを解明し、変換技術の開発につなげる。
同社は元素変換が自由にできるようになれば、有害物質の無害化や新エネルギーとしての活用などで事業化の道が開けるとみている。
使用済み核燃料を再処理した後に残る高レベル放射性廃棄物には二百万年以上にわたり放射線を出し続ける物質が含まれる。核燃料サイクル開発機構は加速器で高速中性子を照射して廃棄物を消滅処理する技術を検討しているが、コストが高すぎて採算が合わない。元素変換技術が実用化できればこの問題を解決できる可能性がある。
化石燃料に代わる新たなエネルギー源としての利用にもつながる。二・五センチメートル四方のパラジウム金属板を使ってセシウムをプラセオジウムに変えた実験では、元素変換時に二・二ミリワットのエネルギーを発していた。一原子あたりのエネルギー量は原子炉の四分の一という高水準で「うまく制御できれば新たな発電システムとしても使える」(岩村主席研究員)。
同社は二〇〇二年に論文を発表。米国防総省系研究機関のNRL、イタリアでは国立核物理研究所、日本でも東大、阪大などがこの発見を重視し、再現実験に取りかかっている。
【図・写真】三菱重工業の元素変換実験装置
[3月29日]
http://job.nikkei.co.jp/contents/news/inews/nt21auto010/008.html
青森県六ケ所村に建設中の使用済み核燃料再処理工場の事業許可取り消しを市民グループが国に求めた行政訴訟の口頭弁論が10日、青森地裁であり、原告団は再処理工場の安全審査のため国が使用したとされる文書を提出した。戦闘機墜落の想定で、秒速150メートルとされた落下速度が、最大340メートルに達する恐れがあるとする内容で、原告側は「再処理工場が崩壊する可能性がある」と指摘した。
文書には、「ほかの原子力施設での安全評価にも影響を与える」「立地点(六ケ所村)の適合性がクローズアップされ、社会問題化する」などとして、国側が衝突速度の設定を変更しなかったと書かれてあるという。
原告団の核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団(代表・浅石紘爾弁護士)の準備書面などによると、国はこれまで戦闘機が墜落する速度を秒速150メートルと設定。必要な壁や天井の厚さを1.2メートル程度(最大1.8メートル)として防護設計するよう求めていた。
しかし問題の文書は、戦闘機が訓練区域の上限高度の7000メートルから墜落した場合などには、秒速215―340メートルで衝突する可能性を指摘。秒速215メートルでも1.7―1.9メートルの厚さが必要な計算になるとした。
原告団は、秒速150メートルを超える速度で戦闘機が衝突した場合、建物が崩壊すると主張。「政治的な理由で本来検討すべきことがされず事業者に都合の悪い事実を隠すよう画策した」と訴えた。
弁論後、会見した経済産業省原子力安全・保安院の山田尚義訟務室長は「文書は事業者(日本原燃)から提出された物だが、安全審査で使ったかは確認できない。内容を検討し、必要に応じて反論していく」とし、文書の証拠採用に同意した。
文書は、別の訴訟の中で原告団が見つけた。
(河北新報)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040211-00000005-khk-toh
■1月22日(木)
18日放送のNHKスペシャル、貴重な好番組でした。厚い堆積層でろ過された長周期の地震波が、なかなか減衰しない長時間の揺れをもたらし、それに同調する固有周期を持つ超高層のビルが、地表では震度ゼロにもかかわらず、頭頂部が共振して大揺れに揺れたという実話。
十勝沖地震による石油タンク火災の解明もこの長周期地震波によるとの明快な指摘でした。入倉氏をはじめ、地震、土木、建築などの良心的な専門家が多数登場したのもたのもしく感じました。これから大都市はどうなるのでしょう。
原発に直接関係するかは別として、「何もわかっていない」「地震は起きてみなければわからない」という多数の地震学者の証言にもかかわらず、東海地震による影響をすべてわかっているかのようにいう中電に、空恐ろしさを感じていました。この新事実も、なんら知られていないところで超高層ビル が続々と建てられてきたことを明らかにしました。今でもまだ、認知されていないのです。(SEA)
http://www.stop-hamaoka.com/nikki/0308.html
発行部数120万部を超える「通販生活」No.217 2004【春号】 暮らしのページ【通販生活の疑問】に浜岡特集記事が掲載されました!
中部電力と原子力安全・保安院への質問状
浜岡原発(4機)は即刻、運転中止すべきではありませんか?
取材・文●椎名 玲(ジャーナリスト)
椎名玲さんが、石橋克彦神戸大教授などに取材して疑問点を提示し、中部電力と経済産業省 原子力安全・保安院に質問をぶつけ、回答を掲載しています。
定価180円と安く、またこのような志のある会社を支持する意味でも、ゼヒお買い求めください。できたら「通販生活」の中の商品も購入されると尚良しです!

http://www.stop-hamaoka.com/news/seikatsu/seikatsu.html
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■「人工の太陽」 Vol.266 01/23/03
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●HP(登録・解除) http://www.emaga.com/info/xp010617.html
1.イラク派兵の経済的利益
つい最近JMMを見ていたら、「自衛隊のイラク派遣で日本が得
られる『経済的利益』というと、どういうことが考えられるでしょ
うか」という質問が提起されていた(No.254)。
http://ryumurakami.jmm.co.jp/recent.html
一体、日本政府がどういう具体的計算を行い、あるいは行ってい
ないのか、実態は定かでないが、新聞報道を見る限りでも、三菱商
事がイラク国営石油公社と原油輸出の契約を結んだり、西部のガス
田開発に乗り出したり、NECがイラク国内携帯電話基地局設備の
一部を受注したり、さまざまなビジネスが形になり始めていること
は分かる。
<参考>イラクにおける携帯電話サービス開始を伝えるPRIの報
道
http://www.theworld.org/therest/index.shtml
http://www.theworld.org/content/01132.wma
そんな中、自衛隊派兵という対米協力との関係で、筆者が興味を
持っているのは、国際熱核融合実験炉(ITER)の誘致問題であ
る。
一見、何の関連もなさそうなのだが、少なくとも結果的には、二
つの問題がリンクしていると考えたほうが、むしろ自然なのである。
2.対米協力とITER誘致
「AERA」1月19日号(<「ブッシュ復讐説」蔓延の仏 リ
ビアもITERもいやがらせ?>)もこうした切り口で、誘致問題
に触れているのだが、すでに昨年12月、たとえば次のBBC記事
は、地の文で「米国がフランスという選択肢に反対してきたのは、
フランスが米国のイラク侵攻に反対してきたからである」と直裁な
評価を加えている。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/3336701.stm
<参考>同趣旨の報道
http://www.spiegel.de/wissenschaft/mensch/0,1518,279499,00.html
どういうことかと言うと、実験炉の誘致場所が昨年暮れには選定
されるはずだったのが、結論が先送りされ、フランスを推すロシア
・中国と、日本を推すアメリカ・韓国との間で、熾烈な綱引きが行
われているわけだ。
<参考>平林博・駐仏大使の意見記事
http://www.lemonde.fr/web/recherche_articleweb/1,13-0,36-350044,0.html?query=ITER&query2=&booleen=et&num_page=1&auteur=&dans=dansarticle&periode=1&ordre=pertinence&G_NBARCHIVES=806357&nbpages=1&artparpage=10&nb_art=1
イラク戦をめぐる対応と誘致問題を結びつけるフランス国内の論
調に反論している。
当面、巨額の建設費を負担することになるとしても、誘致の成功
が研究の主導権獲得に繋がることは容易に想像できる。直接の経済
的な波及効果ばかりでない。あくまで「いずれ核融合炉の建設・稼
働に成功する」という前提の上での話だが、将来的に化石燃料やウ
ランが枯渇することも考えれば、実験炉誘致がまさに「国益」を左
右する問題であることが分かるだろう。
次のような報道を見ても、対米協力と誘致が無関係であるという
ほうが難しい。
<参考>米エネルギー長官の発言
熱核融合実験炉 日本誘致を支持 米長官公式表明
2004.01.10 東京新聞朝刊
来日中のエーブラハム・米エネルギー長官は九日、東京・大手町
の経団連会館で講演し、日本の六ケ所村(青森県)と、欧州連合(
EU)の統一候補であるフランスのカダラッシュが争っている国際
熱核融合実験炉(ITER)の誘致で、日本を支持する考えを公式
に表明した。
同長官は、米中枢同時テロやイラク戦争など日本が米国を常に支
持してきたことに感謝を示した上で、ITERでも「米国は日本へ
の立地を強力に支持している」と述べた。
そのアメリカは、98年にITERから離脱しているが、どうい
うわけか2003年1月に復帰している。
http://www.heise.de/tp/deutsch/html/result.xhtml?url=/tp/deutsch/special/zen/16379/1.html&words=ITER
もちろん、以上の報道だけから、誘致のためだけに自衛隊の派遣
を決断したなどと乱暴な主張をするつもりはない。派遣したからと
言って思うような結果が得られるとも限らない(逆に中国、ロシア
、フランス、さらには韓国が反発を強めることも考えられる)。
ただし、おそらく複数ある判断要素の一つには上っていたものと
推測される、ということを言いたいのである。
3.核融合反応のしくみ
ところで太陽が46億年も輝き続けられているのは、その内部で
水素が核融合反応を起こしているからである。
核融合とは何か?
『核兵器のしくみ』(講談社現代新書)を参考にまとめると、次
の通りである(第6章参照。山田克哉氏には他に『原子爆弾』(講
談社ブルーバックス)等の著書がある)。
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=1497006
すなわち、水素ガスが極めて高温になると、電子が水素原子核(
陽子)から分離し、バラバラの状態になる(プラズマ)。陽子はプ
ラスの電荷を持っているため、互いに接近しても、クーロン力が働
いて斥け合う。しかし、さらにプラズマの温度が上昇して、陽子同
士がある至近距離以上に接近すると、核力がクーロン力を上回って
、陽子と陽子が結びつく。
<参考>核力
http://www.kobe-np.co.jp/nie/rika/rika94.htm
この時、一方の陽子は中性子に変わり(!)、陽電子とニュート
リノが創成される(!!)。陽子と中性子は安定して結びつく(重
陽子=重水素の原子核)。これらの粒子はそれぞれ運動エネルギー
を持っているので、粒子全部の運動エネルギーを足し合わせると、
大きなエネルギーとなって、熱が生まれる。
この熱はプラズマガスの温度を上昇させるのに費やした熱よりも
さらに大きいので、発電に利用できる可能性がある(熱で蒸気を作
ってタービンを回す発電の原理自体は、火力・原子力発電と同じ)。
しかし、地上で陽子(Proton)と陽子を核融合反応(P−P反応
)を起こすのは技術的に極めて難しい。一方、重陽子(重水素の核
=Deuteron)、三重陽子(三重水素(トリチウム)の核=Triton)
を利用して核融合反応を起こすことは不可能ではない。
次の3つの反応がある。
ア.D−D反応
重陽子(pn)+重陽子(pn)→三重陽子(pnn)+陽子(p)
イ.もう一つのD−D反応
重陽子(pn)+重陽子(pn)→ヘリウム3(ppn)+中性子(n)
ウ.D−T反応
重陽子(pn)+三重陽子(pnn)→ヘリウム(ppnn)+中性子(n)
生まれるエネルギーの量は、それぞれ順に 4.0、3.27、17.6メガ
電子ボルトになる。最後の 17.6メガ電子ボルトのうち、14.06メガ
電子ボルトが中性子によって運ばれる。
だから発電という観点から言えば、ウの反応が最も有利だという
ことになる。実際、ITERの実験炉で扱うのはD−T反応である。
以上のとおり、である。
したがって、核融合炉を実現するためには、まず超高温のプラズ
マ状態を作り(日本は核融合実験装置JT−60が5億2000万
度という超高温を実現している。ちなみに太陽の表面温度は約60
00度、中心温度は1500万度)、そのままでは炉が解けてしま
うので、プラズマを強力な磁場の中に閉じこめて断熱し(その方法
の一つがトカマク型装置である)、その上、高いエネルギーを持っ
て飛び出してくる中性子を効率よくブランケットと呼ばれる分厚い
壁で吸収して、熱を取り出さなければならない(『新・核融合への
挑戦』)。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062574047/249-2468345-4541905
4.小柴氏の反対要請
上記『新・核融合への挑戦』によれば、核融合反応は核分裂反応
のような連鎖反応ではないので臨界事故が原理的に起こらないのだ
という。プラズマはごく少量でも不純物があると冷えてしまうので
、もし何かが起きて壁の数ミリグラムの極小破片がプラズマに混入
したり、空気が数cc混入するだけでプラズマの温度が下がり、核
融合反応が自動的に止まる(同書210ないし215頁)。
しかし、驚くべきことに、ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊
東大名誉教授は、「ITERが新しいクリーンなエネルギーの開発
につながると考えたら大間違い」などとして誘致に反対しているの
だ。
http://www.mainichi.co.jp/news/article/200303/18m/130.html
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2002/1009/nto1009_10.html
http://www.ne.jp/asahi/n/kinoko/noITER.html
『核兵器のしくみ』によると、中性子のスピードが大きいと、生
物の細胞を構成する陽子にぶつかって、これを跳ねとばす。跳ねと
ばされた陽子はプラスの電荷を持っているので、他の原子と電気的
に活発に作用する。その結果、細胞の構成が変化してガン化する恐
れが高い。中性子線そのものが放射線である。
一方、原子核が中性子を吸収し、中性子過剰となると、中性子を
減らして安定しようとする。この時、中性子が陽子に変わり(!)
、電子と反ニュートリノが創成される(!!)。これを中性子のベ
ータ崩壊という。中性子がベータ崩壊すると、電子(ベータ粒子)
が放出される。ベータ線という放射線である。ベータ粒子は生物の
細胞を形成している原子と電気的に反応し、これをイオン化するの
で、やはり細胞がガン化する可能性が高い。
原子核がベータ崩壊した直後にガンマ線という高いエネルギーの
電磁波を出すこともあるが、ガンマ線も人体の細胞に作用して、染
色体を侵すことがある(同書73ないし95頁)。
小柴氏の指摘に対して、原子力委員会の核融合専門部会がどんな
対応を取っているのかと思って、aec.jst.go.jp を「小柴」「核融
合」というキーワードでサイト内検索してみた。
すると、次のような資料が見つかった。
この内、2001年2月26日付けの「ITER計画検討会まと
め」には、意外にも次のような記述がある。
http://aec.jst.go.jp/jicst/NC/senmon/old/iter01/siryo/siryo15/siryo2.pdf
◎ 朝日新聞の小柴論文に関連するが、壁の放射線損傷が深刻だ
と言う認識がプラズマ物理の人には無かった。学会などでの炉工学
とプラズマ物理などとの情報交換が必要。この問題は高βにすれば
解決する。
◎ 小柴論文についてはその後サンケイ新聞、朝日新聞で反論し
ている。小柴氏は事実誤認による主張を繰り返している。
「壁の放射線損傷が深刻だと言う認識がプラズマ物理の人には無
かった」などとあっさり言われては困ってしまうのだが・・・。
上記文書に言う「反論」のうち一つは「核融合炉の安全性確保は
可能 香山晃(論壇)」(2001年2月2日付朝日新聞朝刊記事
)を指しているものと思われる。
香山氏は京都大学エネルギー理工学研究所教授で、
http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/iaen_j/members.html
まさに中性子の安全な処理に関わるフェライト鋼の開発等を行って
いたことが窺える。
http://133.3.13.33/publications/rr199707imr/rr970701.htm
http://www.google.co.jp/search?q=cache:iCXWx6GBTggJ:www.iae.kyoto-u.ac.jp/press/AR/AR-97/CW_OO.html+%E9%A6%99%E5%B1%B1%E6%99%83%E3%80%80%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88&hl=ja&ie=UTF-8
http://www.google.co.jp/search?q=cache:lOl5FapwoWEJ:www.utnl.jp/utnl-w/0006/b_p9715.html+%E9%A6%99%E5%B1%B1%E6%99%83%E3%80%80%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88&hl=ja&ie=UTF-8
ちなみに、小柴氏のノーベル賞受賞は2002年10月である。
ノーベル賞受賞者の発言が常に正しいという保証はないが、世間
的には絶大な権威があるわけだから、一体いずれが正しいのか、徹
底的に討議して明らかにしてほしいものである。
また、「核融合研究開発基本問題検討会(第4回)議事録」は次
のように記している。
http://aec.jst.go.jp/jicst/NC/senmon/kakuyugo2/siryo/kaihatsu05/siryo32.pdf
【岸本委員】 最後の方で、核融合のブランケットとか材料とか廃
棄物のことでいろいろご指摘をいただいたのですが、ご指摘の内容
というのは大体我々が持っている問題意識とそんなに相違してない
ので、どこまでやれてるかというのは必ずしも十分でないかもわか
りませんけれども、大体ご指摘いただいた方向の問題意識は持って
いると思っております。特に、材料については、小柴先生のご指摘
もあるのですけれども、燃焼プラズマの前にもっと材料をやるのか
、材料はともかく燃焼プラズマの後でやるのかとか、いろいろな議
論は当然やっている側でもあるのですけれども、ひとまずはある程
度もちそうな材料としてフェライト鋼というのが一応念頭にあって
、それがある程度使えると思うと、とりあえずはとにかく燃焼プラ
ズマで燃料が燃えるんだと、制御できるんだというところまでいこ
うというのが一つのコンセンサスで、その見通しをしつつ材料をち
ゃんと確認していこうと考えています。
トリチウムの処理やフェライト鋼の使用については、一応、上記
『新・核融合への挑戦』でも言及がある(212ないし214頁)。
なお、限られた科学予算をめぐって、小柴氏の推すニュートリノ
実験施設建設計画とITERが、少なくとも当座、バッティングす
る関係にあることも、念頭に入れておいたほうがいいかもしれない。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-11-17/01_05f.html
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-11-18/01_03.html
<参考>高エネルギー加速器研究機構
http://www.kek.jp/newskek/2003/janfeb/k2k-3.html
http://www.kek.jp/press/2002/k2k.html
次の記事によれば、ITER推進派の間にも微妙な温度差がある
ことが窺われ、現実には科学研究も“政治”と無縁ではあり得ない
のである。
http://www.ibaraki-np.co.jp/contents/news/2002/feature/iter/
5.「人工太陽」への道のり
さて、問題の候補地は本年2月に選定される見通しである。
日本政府は思惑通りに実験炉の誘致に成功するのか?
誘致に成功したとして、21世紀中に商業核融合炉を稼働させる
ことができるかどうか、無論筆者には分からない。
“iter”はラテン語で「道」を意味するのだという。
http://www.arts.cuhk.edu.hk/Lexis/Latin/
「人工の太陽」を手中にするまでの道のりは未だ遠く険しいに違
いない。
果たしてプロメテウスは天上の火を人類にもたらしてくれるのだ
ろうか?
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%A1%E3%83%86%E3%82%A6%E3%82%B9
<参考>Y!ニュース−国際熱核融合実験炉
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/science/iter/
<参考>ITER
http://www.iter.org/
<参考>研究機関
・文部科学省核融合科学研究所
http://www.nifs.ac.jp/index-j.html
・日本原子力研究所那珂研究所
http://www.naka.jaeri.go.jp/
・大阪大学レーザー核融合研究センター
http://www.ile.osaka-u.ac.jp/
・京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻核エネルギー物理工学
研究グループ
http://p-grp.nucleng.kyoto-u.ac.jp/fusion/
<参考>「サイト共同評価のためのサイト提案書」
http://www.naka.jaeri.go.jp/mext/TranslationFinal.pdf
<参考>ITERサイト候補地の青森県上北郡六ヶ所村尾駮(おぶ
ち)字弥栄平(いやさかだいら)
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2002/0820/nto0820_18.html
http://www.mapion.co.jp/c/f?grp=all&uc=1&scl=3000000&icon=mark_loc%2C%2C%2C%2C%2C&coco=40%2F57%2F14.904%2C141%2F18%2F57.856&el=141%2F18%2F57.856&pnf=1&size=500%2C500&sfn=all_maps_00&nl=40%2F57%2F14.904&
<参考>自民党「エネルギー基本政策に関する中間報告」
http://www.jimin.jp/jimin/saishin03/pdf/seisaku-007.pdf
<参考>原子力資料情報室「核融合の問題点」
http://cnic.jp/news/topics/iter/files/fusion.pdf
<参考>人民日報記事
http://english.peopledaily.com.cn/200310/16/eng20031016_126174.shtml
<参考>中国科学院プラズマ物理研究所
http://202.127.204.25/ENGLISH/index-one.htm
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http://www.asahi.com/paper/editorial.html
日本の原子力政策を決める最高機関である原子力委員会の委員5人のうち委員長ら4人が交代した。曲がり角にある原子力のあり方を変えられるかどうか。新委員会はまさに存在を問われている。
原子力政策は現実から離れる一方だ。政府の長期エネルギー需給見通しは原発について、いつも過大な数字を掲げてきた。それが根幹にあるため、エネルギー政策全体をゆがめる結果となってきた。
現在の計画は「2010年までに9〜12基の原発を増設する」という内容だが、これも実現は不可能だ。昨年12月に関西、中部、北陸の3電力が共同で計画していた珠洲原発(石川県)と、東北電力の巻原発(新潟県)の建設が撤回されるなど、原発の増設は難しくなっている。
その背景には反対運動だけでなく、電力需要の伸び悩みなど経営側の事情もある。電力の自由化と燃料電池など分散型エネルギー技術が急速に進むなかでは、原発に必要な巨額の投資はリスクが大きい。
二酸化炭素を出さない原発は温暖化の防止に貢献する。しかし、現実ばなれした新設数を掲げ続けることは、むしろほかの温暖化対策やエネルギー源を多様化させる政策を弱めてしまいかねない。
いま必要なのは、現実を見つめ、日本の原子力を国民の多くが納得する規模と内容に着地させることだ。
なかでも緊急の課題は、核燃料サイクル政策の見直しだ。
「原発の使用済み燃料をすべて再処理してプルトニウムを取り出し、高速増殖炉で使う」という現在のサイクル計画は、約40年前の政策が基本になっている。
しかし、高速増殖炉は全く実現の見通しがたたない。それまでのつなぎとされるプルサーマル計画もコストが高いうえ、地元の反対などでなかなか始まらない。
原子力委は、サイクルを含め原子力政策について各方面の意見を聴く会を近く始めるという。電力業界や地元の利害などを調整し、社会全体が同意できる道を探ってもらいたい。
原子力政策が変わらない一因は、計画を立てる仕組みにもある。長期エネルギー需給見通しは総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)がつくり、原子力の規模も決める。それを横目に見ながら原子力委が原子力の長期計画をつくる。どちらが主かわからない二本立てなので、大胆な変更が難しく対症療法ばかりになる。
だが、今年は需給見通しを改め、原子力長期計画の改定作業を始める年だ。縦割りを超え、全体を見て合理的な原子力政策に変える好機である。
そのためには、総合資源エネルギー調査会も原子力委員会も変わらなければならない。そうでなければ、総合的なエネルギー政策を考える新たな場を検討しなければならない。
1986年4月25日深夜、巨大な爆発音がウクライナの闇に轟いた。チェルノブイリ原子力発電所で重大な事故が発生したのだ。何万人もの人々が住み慣れた街を強制避難させられていった。体じゅうを放射能に蝕まれた彼らはどんな運命を辿るのか?
今なお世界中で影響が残るあの原発事故の被害を、避難の途中バラバラにされていったある家族をモデルに描く迫真のドキュメント・ノベル。
【チェルノブイリの少年たち】
運命の金曜日
「ああ、神様、どうか助けてください……」
ドドーンという巨大な爆発音が、ウクライナの闇に轟いた。
1986年4月26日、といっても人間の感覚のなかでは、実際にはまだ25日の金曜日、夜12時を回っていくばもない、夜中の1時23分からはじまった出来事である。
時刻をこれほど正確に記しておくのは、これが人類にとって異様な事件で、後日に想像を絶する大惨事に発展したからである。その時には、地上の誰ひとりとして、この事態の深刻さに気づかなかった。
わずかにこれを目撃した土地の人びとは、いきなり恐怖の底に突き落とされ、暗がりのなかで釘づけになった。鬼気に取り憑かれ、目の前で激しく立ち昇り、真っ赤な影を、つややかな黒い夜空に浮かびあがらせていた。
四角張って何の変哲もないコンクリートの建物だったが、いまは炎が揺らぐたびに影が踊り、全体が一羽の巨大な鳥のように動いて見えた。ちょうど中心部から大空に伸びている煙突が鳥の首のように細く、その左右にある建造物が翼のように張り出していた。
まだ15歳にしかならないイワン少年が、この光景を一部始終、まだ何も起こらない静寂の夜景から、そこへいきなりパチパチと火花が散るように火の粉が舞いあがる瞬間まで、完全に目撃していた。イワンは翌朝、土曜日にはカリーナと学校で会い、手紙を渡そうか渡すまいかと迷っているところだった。
ベッドから見を起こし、カーテンを開いて、高層アパートの4階から何気なく遠望していた瞬間、ほんの目と鼻の先に見えるチェルノブイリ原子力発電所が、意表をついてイワンの目のなかに飛び込んできた。砕け散ったコンクリートの破片がいくつも空に舞い、同時に火炎が夜空をまばゆく照らし出したときには、少年は何も感じていなかった。オモチャのようであり、幻想でもあるような一景が、不意にパッと踊っただけだった。
しかし、次の瞬間、ドドーンという大音響とともに窓ガラスが激しく音を立てて振動し、やがて地鳴りのように高層アパートが揺れたときには、イワンの手先が細かく震えた。体のなかが凍りついたように冷たくなり、父親の顔を思い浮かべながら、彼はまだ叫ぼうとしなかった。彫刻のように動けないまま、イワンはたちまち第2の爆発を目にした。
今度は火の柱が空高くまっすぐ昇ってゆき、大きな塊も吹き上げられた。じっと目を凝らすと、その塊がゆっくりと建物のところに落下してゆき、屋根を破壊したようだった。
おそろしいことが起こったのだ。
少年の両手は胸のまえで固く握り合わされ、思わず唇からささやくような言葉が漏れた。
「ああ、神様、どうか助けてください……神様、これが嘘でありますように……お願いです。僕たちは死んでしまう……殺さないで、まだ殺さないでください」
こう言い終えてから5秒もたたないうちに、不思議な音響が少年の耳に流れ込んできた。自分の住んでいる高層アパートのあちこちで、爆発音に気づいた人びとが夢からさめ、起き立って窓を開くと、大火災が目に飛び込んできた。誰もが甲高い悲鳴をあげていた。
その声がイワンの恐怖心を一気に爆発させた。
──本当だ。嘘じゃない。爆発しちまったんだ。もう駄目だ。何もかも終りだ。みんな叫んでるぞ。俺は全部見てたんだ──
こう胸のなかでつぶやいた時、部屋の扉が勢いよく開かれた。
「イワン」と言ったきり、母親は口をつぐんで、そこに立っていた。
「燃えてるよ、お母さん。どんどん火事が大きくなっていくよ!ねえ」
相変わらず外を見やっているイワンの両眼から、涙がぽたぽたと枕に落ちはじめ、唇がげじげじのようになったかと思うと、彼はいきなりベッドから飛び出し、床に膝をついて坐りこんでしまった。肩が大きく呼吸をしていた。
これに応えてやれるような出来事であれば、母親のターニャはどれほど心が救われただろう。
少年は拳を握りしめながら立ちあがると振り返り、いよいよ高まってゆくアパートのなかの騒ぎを耳にしながら、今度は母親の顔を見つめた。薄暗がりのなかで蒼白になったきり、ターニャは身動きひとつしなかった。その姿はこれから家族にふりかかってくる災難を見透かしたかのように、イワンの目に心細いものに見えた。
しかしふたりは、それほど長く視線を合わせ、意味深い言葉を交わしていることができなかった。
「電話が通じない」と、荒々しく野太い声を出しながら、父親のアンドレーがふたりの間に入ってきた。「イネッサを起こして、逃げる用意をしよう。さあ、ターニャ、子供たちを助けたくないのか」
すでに廊下を走るやかましい足音が、アパートじゅうに響いていた。何人かの男たちは家財道具を両腕いっぱいにかかえて階段をおりてゆき、自分の車まで運んでゆこうとしていた。
窓から直視できるチェルノブイリ原子力発電所は、ますます火勢を強めている様子で、目を向けるたびに、炎全体の高さが1メートル、また1メートルと上空に大きな円弧を描きながら力を広げている。
「これが」と、ターニャはようやく口を開いた。「私たちの信じてきた世界一安全な発電所だったのね」
烈しい怒気がこもった最後の言葉だった。
根拠のないことではない。夫のアンドレーから、絶えずそう聞かされ、実際、つい昨日まで、事実がそれを実証してきた。誰もがそこに信を置いていた。これほどおそろしい落とし穴があると、アパートの住人の誰が予測できただろう。
一体、それがなぜ爆発したのだ。
あの発電所とは、何ものだったのか。
ここプリピアーチの町は、世界一の原子力基地をめざしていたし、その日が訪れるのにあと2年のプラン、という急速な発展を遂げてきた。アパートの住人は、みな誇り高い発電所の職員家族だった。なかでもアンドレー・セーロフはこの発電所の古参組で、一点の曇りもない自信を抱いて、設計から運転作業のすみずみに至るまで監督してきた男だ。
彼は、物事を冷たく観察し、疑い深かった。自分自身に絶えず疑いを抱き、最悪の事態が百パーセント起こらないと保証できるまで、すべての指示に確認を怠らなかった。しかし、すでに今夜は、妻のひと言が彼の全人格を否定してしまい、それに反論することもできない。
現に、“アンドレーの発電所”は燃えているのだ!
決死の覚悟
イワンは父親の顔に目を向けようとしなかった。アンドレーが手渡そうとしたバスタオルを、床に叩きつけた。
「こんなものを頭に巻いたって、助かりゃしないよ」
「いや、車まで行く途中で、ずいぶん違う。いいから、巻いてくれ。まだ死ぬと決まったわけじゃない。生きられるんだ。約束する」
その言葉に気を取り直したターニャは、床に落ちたバスタオルを急いで拾いあげると、息子の手に握らせた。それから彼女は、窓の外に一瞥を投げかけると、正体もなく寝入っている下の娘のベッドに走った。
イネッサは、まだようやく11歳の誕生日を迎えたばかりだった。娘を抱き上げようとした瞬間、拡声器から流れる陰にこもった声で、アパートの住民に退避を呼びかける警告が、窓の外から聞こえた。
批難の準備を急ぐように……荷物を最小限にとどめるように……消防隊が消火作業を続けているので不安を抱かないように……子供を先に逃がすように……子供たちには薬を配るので、ただちに飲ませるように……窓を完全に閉めておくように……
次々と耳に飛びこんでくる言葉は、いたずらに恐怖心をあおらないよう注意深く選んで語られていたが、いよいよ底知れぬ現実がそこまで来ている緊迫した状況を伝え、3人の胸を鋭い剣のように貫いた。
やさしく起こされたイネッサは、日頃から体は弱かったが、気は強かった。父と母ばかりか、兄までが夜中に起きているのをいぶかしく思いながら3人の顔を順に見やったが、ただ事ではない様子を相手の目から読み取った。
急いで事情を教えられると、少女は早口に
「どこに逃げるの」と尋ね返した。
「遠くだ」と、アンドレーの口から勢いよく言葉がついて出た。「ともかく、できるだけ遠くに逃げるんだ。いいか、離れられるだけ町から離れろ。いいな、3人ともだ」
ターニャはその言い回しを耳にした途端、膝がくずれおちそうになった。
「あなたは、ねえ、あなたは逃げないの」
「俺は」と言って、夫は視線を下に落としながらターニャの両肩に手をかけた。「しばらく残って様子を見る。大丈夫だ。俺は、責任者のひとりだ。逃げれば、卑怯な男にされちまう。違う。俺には責任がある。それより、早く水筒に水を入れろ。それから食べ物と着替えを早く用意してやれ。イワンとイネッサ、いいか、何があってもお父さんのことを覚えてろよ。そうすればかならずまた会える。はっきり言っておくが、お前たちは遠くに連れていかれるだろう。それがいい。できるだけ遠くの町へいけるように頭を使うんだ。ターニャ、君もだ」
これは普通の火災ではなかった。原子炉が爆発し、容易なことでは燃えないはずの黒鉛が燃えているのだ。冷静な原子物理学者が分析すれば、「すでに爆発したのだから、もう水をかけてはいけない。そこに水を注げば、内部の核反応にふたたび火をつける」と忠告したかも知れない。しかし現場に駆けつけた消防士には、ただの火災でしかなかった。
火の手は、爆発した4号炉から隣の3号炉まで広がろうとし、さらに危険な状態になる可能性が高かった。消防士は文字通り決死の覚悟で建物のなかへ突進してゆき、あるいは至近距離まで近づいて放水を続けた。延焼を食いとめる作業に全精力が注がれていたのである。
一方で、爆発した4号炉の火勢はとどまるところを知らず、内部から煮え立つ金属が上空へ噴出して、アンドレーが窓から俯瞰する限り、ほとんど絶望的な事態を迎えていた。
もくもくと煙をあげる通常の火災と違って、火の煙突が一本の直立した円柱となってどこまでも上へ伸びていく様は、それがどれほど激しい上昇気流であるかを物語っていた。
イワンの目は、夜景を眺めやっている父親の背中が、力なく丸まっているのに気づいた。かつて一度も見たことのない痛々しい姿勢だった。
「お父さん、一緒に逃げて!」と思わずイワンは叫んだ。「もう終りだよ。こんな所に残ってたって、何にもなりゃしない。みんな逃げるし、残ってれば死ぬんだ。死ぬんだよ。僕らと、もう会えなくてもいいのか」
振り返ったアンドレーは、一瞬、放心したような顔つきをしていた。
イネッサが烈しく泣き出して、父親の膝にとりすがった。
「僕はどこにもいかない。お父さんと一緒に死ぬよ」と、イワンが鋭く言葉を継いだ。
「バカを言うな。やめてくれ。何のために生きてきたんだ。お前たちさえ逃げてくれれば、お父さんは幸せだ。ほかには何もいらない。それに、まだあきらめてない」
アパートの各世帯を走り、扉を叩き回ってきた発電所の職員が、セーロフ一家の部屋まで来たのはその時だった。
「セーロフさん、お子さんを下にやってください。薬を配ってから、バスに乗る手続きをしています」
「子供だけですか。あの、妻は」
「まだ大人についての指示は受けていません」と、連絡係は言い捨てて、隣の部屋に走って行った。
これで家族が離ればなれになり、一生涯会えなくなるという不安が、4人の胸のなかにふくらんだ。
どっと押し寄せてくる感情が、ターニャの胸を押し潰しそうになった。
しかしアンドレーは、一家4人が車で逃げる途中で当局に捕まったり、たとえうまく逃げても、避難先に当てがないことなどを思いめぐらした。やがて、子供ふたりに噛んで含めるように再会の可能性を説いてから、一階でおこなわれている手続きを急がせた。
もうすでに、階下には子供たちの長い行列が伸び、幼い赤子を抱いた若い母親がそれに劣らず大勢つめかけているのを、イワンとイネッサの兄妹は見た。軍人が語気荒く人びとに命令を下し、それに対して、必死の形相の母親たちも負けていなかった。このような生きるか死ぬかの瀬戸際にあれば、人間は黙って他人に服従などしないものだ。古参組のセーロフ一家と違って、若い住民たちのパニック状態は収拾のつかないものになっていた。
ところが子供たちを、いつ、どこへ、どのようにして連れてゆくか、軍人たちにもまだはっきりした計画はなかった。家族が互いに連絡する手段も決められていないこの状態では、子供を当局の手に預けてしまうことが、若い母親に大きな動揺を生んでいた。
破局的な大事故らしいという言葉が、行列に並んでいるイワンの耳に流れこんできた。
ことに気懸かりになったのは、原子炉の底が完全に抜けてしまい、その下にある貯水プールに灼熱の燃料が溶け落ち、やがて隣の3号炉も吹き飛ぶのではないかという噂だった。誰かが決死隊としてプールの水を抜いてこなければならない。果たして誰がゆくか。母親たちにとっては、自分の夫だけは志願して欲しくないが、逆に誰か勇気ある者が一刻も早く突入して欲しいというのが本心だ。
独身の男がいいだろう、という意見が大勢を占めていた。しかし、百パーセントの確率で死ぬと分っている決死隊を志願するには、このような場合、それだけの動機がいる。自分の子供を助けたいという感情が、最も純粋で、最も公算の高いものだ。そのため、多くの妻たちが夫の無謀な行動をおそれていた。
薬を飲み、名前を登録して自分の部屋まで戻ったイワンとイネッサは、父母と最後の時間を過ごしながら待機していた。
一睡もしていない疲れから、イワンは口を利かなくなっていた。それでも彼は、眠ろうはしなかった。
どれほどの時間が経っただろう。
ウクライナの草原に日が昇りはじめた。昨日までは、朝鳥の声がそちこちに立ちはじめる時刻だったが、なぜか自然の物音はいっさい聞こえなかった。
人びとは昨夜の悪夢を忘れようとした。夜明け直前の濃紺の空に、一気に光が届けば、病人でさえ気分が晴れるものだ。だが、彼らが目にしたのは、チェルノブイリ原子力発電所が朝日に長く尾を引きながら影を見せ、一向に止むことのない激しい火柱を立てているおそろしい光景だった。
それまで闇夜に浮かび、昼をあざむくように明るく一帯を照らし出していた幻のような火災現場ではなく、今こそ細部まで目にはっきりと認められる輪郭を持ち、哀れにも屋根が吹きとばされたまま炎に包まれている建物が、依然としてそこに燃えさかっていた。
朝の訪れが、プリピアーチの人びとにさらに冷酷な現実を教えはじめた。
これから何が起こるか。
深夜のパニックのあとに、底知れぬ不安が襲いかかってきた。
アパートの住人は、ほとんど誰も避難していなかった。夜明けを期して、ひとまず近隣地区へ全員が脱出せよ、という指示が伝えられると、それぞれ応急の工夫をこらして全身をいろいろな服装で守った男たちが、アパートから足早に走り出して自分の自動車を取りに行った。どうやら、バスの準備はまだ遅れているらしい。そのため家族はまだ離ればなれにならずにすみ、あちこちで安堵の声が漏れた。
いっせいにエンジンの音が町じゅうに響き渡ると、自家用車の群がアパートの前に整然と列をつくり、家族を乗せはじめた。
アンドレー・セーロフは自分の赤い車まで走った。それを見たとき、予想していた以上に屋根と窓ガラスに灰がふりかかって、霜が降ったようにこびりついていた。風の加減で、そのあたりに特に灰が降ったようだ。彼は丹念に白い汚れをふき取ってから、体の外側にかぶってきた即製のビニール服を、頭のてっぺんから足の先まで、皮を一枚むくように脱ぎ捨てた。それから一瞬の間も置かずに車のなかへすべりこむと、初めて大きな息をした。
口のなかが不快な感触を持ち、歯と歯が触れるたびに自分の体ではないような印象を受けた。
エンジンをかけてから、走り出す前にアンドレーはそっとドアを開いて地面に目を落とした。さきほどそこに転がっていた鳥の死骸が、気懸かりになったからだ。案の定、それはまだ消え入らんばかりの呼吸を続けている、生きた鳥だったのである。
この鳥が飛び回っていた空気のなかへイワンとイネッサが踏み出せば、何が起こるだろう。この鳥は、たった今、空から落ちてきたばかりなのだ。もしや、すでにイワンとイネッサは、という考えがアンドレーの脳裏に走った。
アンドレーはアパートまで車を走らせると、出口に待機している家族3人に、口と鼻をしっかりマフラーで覆うよう合図を与え、急いで車に乗りこませた。しかし、出発できなかった。
これから先は、軍用トラックに先導されて、ひとまず風上に向かって南下する予定だという。
一刻も早くこの土地を脱出しなければならないと知っているアンドレーは、押し黙ったまま不機嫌な表情でトラックの出発を待ち続けた。実際、自家用車を持たない人が全員トラックに乗ってしまうまでには、このさき何時間もかかるのではないかと感じられるほど、ゆっくりしたものだった。やがてバスが到着しはじめると、幌つきトラックよりバスのほうが気密性が高いため、ほとんどの人がバスへと乗り換えはじめた。そこでまたかなりの時間を食った。
しかし、アンドレーが感じたほど長くはなく、アパートの住人はきわめて敏速に行動していた。
その車の行列が、やがて大移動をはじめた。
ちょうど葬送の列のように、数珠つなぎとなった自動車の列は、プリピアーチの町をあとにした。
────────────────────────────────────────
以上は、チェルノブイリの少年たち、という広瀬隆の本からです。
古い本なのですが、買っていて読まずにいたものを最近読んで、面白い内容だったので、投稿します。
長いので10回に分けて投稿します。
暇つぶしにでもしながら読んでみてください。(エンセン)
経済産業省は21日、2030年度までの中長期的な視点で国のエネルギー・環境政策を検討するため、産業構造審議会(経産相の諮問機関)と総合資源エネルギー調査会(同)の合同会議の初会合を開いた。
この中で、経産省は、2001年に策定された現在の長期エネルギー需給見通しで「2001―10年度までに10から13基」としている原子力発電所の増設目標を見直す方針を示した。昨年12月に東北電力が巻原発(新潟県)の建設計画を撤回するなど目標達成は困難で、政府もこうした現状を踏まえ、今後のエネルギー・環境政策に反映させる方針だ。夏をめどに中間とりまとめを行う。
長期的にエネルギー需要の減少が見込まれる中、原発のあり方や新エネルギーの活用などが今後の議論の焦点となりそうだ。
経産省は、地球温暖化対策を含めた環境問題を産構審で、2030年までの長期エネルギー需給見通しの策定を総合資源エネルギー調査会でそれぞれ始めている。合同会議は、これまでばらばらに進められてきたエネルギー・環境・産業の各政策に整合性を持たせ、「大所高所に立った意見を述べてもらう」(経産省)狙いがある。
(2004/1/22/01:20 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/business/news/20040121ib23.htm
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000006653
ごまめの歯ぎしり メールマガジン版
河野太郎の国会日記
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☆ご感想をお待ちしています。 ☆
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1月10日で四十一歳になりました。
と、同時に三日間、高熱でぶっ倒れておりました。
大事な会がいくつもあったのに、失礼しました。
で、本来ならば週末の三部作になるはずだったメールです。
核燃料サイクル研究会を立ち上げた。
六ヶ所村に使用済み核燃料の再処理工場が造られ、この工場の稼働が
迫っている。
問題は、この工場の稼働が本当に必要なのかという議論が極めていい
加減に行われてきたことだ。
単純に言うと、この工場の稼働を稼働させることなく凍結すれば国民
負担は4兆円で済むところを、ひとたび工場を稼働させると(つまり
核で工場が汚染されることになると)国民負担は十数兆円にふくれあ
がる。
ここでそういう計画だからと議論無しに稼働を強行すれば、年金とグ
リーンピアのようなことになる(つまり負担が顕在化した時に、なん
であのときにそんな馬鹿なことを止めなかったのか、と)。
再処理工場とは、ウランを原発で燃やした時に出てくる使用済み核燃
料からプルトニウムを取り出す工場だ。
本来、プルトニウムを取り出して高速増殖炉で燃やす予定だったのが、
95年のもんじゅの事故で高速増殖炉の実現が極めて難しくなり、
プルトニウムを燃やすことができなくなった。
通産省はあわてて高速増殖炉に代わり、プルサーマルという敗戦処理
技術(あまりメリットがない)を位置づけたが、これも計画通り進ま
ない。
ところが再処理だけはヨーロッパに委託したり、東海村で始めたりと
先行してしまった。その結果、六ヶ所村の新工場を稼働させる前でも
プルトニウムがどんどん貯まり、いまや国内に38トンもある。IA
EAの査察費用のかなりの部分が日本のプルトニウムのために使われ
ている。日本国内にあるはずのプルトニウム量と実際の量の誤差(M
UFという)が200kgもある。
プルトニウムは、ウランの何万倍もの発ガン性を持つ極めて危険な物
質であり、わずか5kgで核爆弾ができてしまうため警備が大変で、
さらにコストも非常に高いというデメリットがある。
六ヶ所村の再処理工場を稼働させると、さらにこのプルトニウムが貯
まっていく。
六ヶ所村の工場本体は当初計画で8000億円のはずだったのが、建
ててみたら三兆円もかかった。
しかもステンレスの溶接という確立された技術を使ったところにひび
割れが発生するという問題が起きている。
六ヶ所村の工場ではジルコニウムとステンレスの配管を異材継ぎ手と
いう新しい技術でつないでいるところが何万カ所だか何十万カ所だか
ある。動燃の東海村の再処理工場も当初の稼働率は無茶苦茶低かった
ことを考えると、六ヶ所村の工場の稼働がスムーズにいくとは思えな
い。
再処理した時の総費用は11兆円と言われているが、これも発表の半
年前には16兆円と言われていた。
11兆円という数字は、通産省がでっちあげた原発の発電コストであ
る5.9円よりも高すぎず(高すぎれば再処理を止めろと言われる)、
ある程度高く(ある程度費用がかかることにしないと電力会社に国が
補助を出せない)という観点から創られた数字なのだ。
だから、国民負担がいくらになるかやってみなければわからないとい
うのが現実なのだ。
2005年といわれる再処理工場の稼働開始を凍結し、再処理が本当
に必要なのか、コストがいくらかかるのか、ということを検証し、き
ちんと合理的に議論してから結論を出すべきだというのが我々の主張
だ。
============================================================
■編集:河野太郎
■発行:河野太郎
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但し、記事の一部を取り出したり改変しての転載を禁じます。
なお、メーリング・リストや掲示板への再配布も許可します

1929年 東京都生まれ
54年に三菱金属鉱業(株)に入社、鉛製錬法の開発に従事
その後、原子燃料製造の研究を手がけ58年からカリフォルニア大学ローレンス・バークレー放射線研究所に留学シーボーグ博士に師事。
帰国後、シリコン、電子材料などの研究開発にも携わった三菱マテリアル(株)会長を経て、現在、相談役を務めている

アメリカ・ワシントンDC生まれ
マサチューセッツ工科大学(MIT)で理論物理学の博士号取得後
AT&Tベル研究所、ラドガーズ大学物理学教授
NRC委員長などを経て現在、レンセラー工科大学学長
MITで博士号を取得した初のアフリカ系アメリカ人女性でもある

1945年 神奈川県生まれ
一橋大学経済学部卒業後、
外務省に入省
北米局安全保障課長、
北米第一課長を歴任
91年外務省を退任後
外交評論家として、
国際問題に幅広く活躍
橋本政権の首相補佐官も務め、
現在は小泉首相の補佐官を務めている
柏崎刈羽原子力発電所はうまく運用されている施設だ
秋元 新潟県にある東京電力の柏崎刈羽原子力発電所をご覧になって、印象はいかがでしたか。
ジャクソン 柏崎刈羽への訪問は2回目です。最初は、アメリカの原子力規制委員会(NRC)の委員長のときに訪問したんですが、当時、6号機が出力のテストをしていました。その折、まだ7号機の原子炉圧力容器に燃料が入ってなく、顔を入れて中をのぞくことができ、ユニークな体験ができました。
あの発電所は、非常に効率が良く清潔で、うまく運用されている施設だ、と思っています。
秋元 岡本さんは首相補佐官として、このところイラクに、何度もおいでになってますね。
岡本 イラクのいろいろなところを回りまして、エネルギーが人々の生活にどれだけ大きな影響を及ぼしているかを、如実に感じます。
今、イラク国内が不安定化していますのも、結局、基本的な社会基盤が弱く、最も重要な電気がこないことが、最大の問題なんです。
電気がこないと、クーラーが使えなくて、酷暑に耐えなければいけない、夜も明かりが灯らないといったことだけではなくて、例えば農業にも電気が必要です。
イラクは水が豊かな国です。チグリス川、ユーフラテス川という二つの偉大な川の水が国中に水路で農村地帯まで入っていまして、たくさんの湖があり、とてもきれいなところです。
ところが、その水を畑に入れるのにもモーターが要るわけです。そのモーターが電気がないので、動かない。ですから種も蒔けないし、収穫も期待できない。
例えばもう一つ、電気がこないために下水の処理ができず、町中に汚水が溢れ、それがまた人々の不安を誘っているというようなこともある。
秋元 大変ですね。
岡本 それから、文明社会では、技術は段階を追って発展していく。ですから、どこかでそれが切断された、壊れたといっても直すことが容易ですが、イラクでは全くそうではない。
イラクの経済の困窮は、今度の戦争で受けた被害ではなくて、13年間の国連の制裁の下で経済が停滞していったためです。
大きな発電所やいろいろな工場も見に行きました。そういった施設は、13年間何の部品も入手できませんでしたから、壊れると、壊れてない別のラインの部品を持ってきて、それをどんどん食ってしまいます。ですから、工場に四本ラインがあっても、結局一本のラインしか動いてない。電球を一つ替えるのでも、「20年も前に生産された電球は今はもうつくってない」という状況です。
発電施設自体の修復が、非常に時間がかかるところまで劣化しています。日本から大型のディーゼル発電機を持っていって、病院や工場に電気を送ればいいんですが、日本をはじめ先進国は電力網が整備されています。ですから小型の発電機しかつくってない。イラクが必要な据え付け型の発電機は我々には不要です。そうすると支援ができない。
イラクのような13年間、段階的な進歩がないところを、今いきなり直そうと思っても、いかに難しいかということです。
エネルギーが国家のあり方、社会の状況を、規定してしまうくらい重要なことを、つくづく思い知らされます。
「確率論的リスク評価」という手法で改革を行なった
秋元 日本でも昨年夏、首都圏で停電があるかないかで、大騒ぎをしました。幸い冷夏で、心配されたようなことはなかったんですが、ニューヨークでは大停電が起こり、またイタリアでも国中が停電になりました。文明の進んだ国であればあるほど、電気を安定供給していくことがいかに大事かを思い知らされた事件だった、と思います。
ジャクソン アメリカでは、夏に大停電が起きて、5000万人のアメリカ人が影響を受けてしまったんです。東海岸だけではなくて、中西部までそれが及んでしまいました。送電線の損傷までに至ったわけですが、そのあおりで原子力発電所はアメリカ国内では9か所、カナダでは3か所停止せざるを得なくなりました。しかし、安全に停止して早く再スタートができました。
アメリカの原子力発電の設備利用率は、一昨年などを見ても90%以上ですので、非常に信頼できると思います。
秋元 ジャクソン博士は1990年代にアメリカの原子力規制委員会の委員長をお務めになり、原子力施設の安全や規制のあり方について大胆な改革をなさいました。
いまアメリカの原子力の設備利用率は90%を超えます。これは規制改革のおかげである、と思っているんですが。
ジャクソン 私が取り組んだ改革は、長年の原子力の歴史、60年代以降の歴史から学んだ教訓が基礎になっていますが、歴史的に見ると、スリーマイルアイランドやウクライナのチェルノブイリ事故後に非常に多くの新しい規制が現れたわけです。その多くが原子力に批判的な風潮に流されたもので、そのために原子力産業は経済的な面で、非常に大きな影響を受けました。
1995、NRCの委員長に就任後に、まず「確率論的リスク評価」という手法を使用して改革を行なったんです。
これはトラブルがどんな過程を経て炉心損傷のような大事故に至るかという確率を踏まえ、システムや機器の重要度を算出して、これを施設の設計から構成、そして運用等に適用していく手法です。
この手法は、運転にも実際に適用することができ、安全性に関わる意思決定においても非常に重要である、と思いました。
秋元 ジャクソン博士の改革が、本当にすばらしいと思うことが少なくとも二つあるんです。
一つは、世の中では、規制と生産は相反することのように思われています。規制を強化することで、生産の効率がある程度犠牲になるのは当然、というような形に理解をされる場合が今まで非常に多かったと思うんです。
しかし、博士の改革は、むしろ規制を本当に合理的で強力なものにすれば、安全も生産効率も同時に向上することを実証して下さったのです。
それからもう一つは、規制の手法を変えるときにいろいろな反対があったと思うんです。一つの価値観を変えるということは本当に大変なことですね。それを立派にやり遂げられた。
岡本さんは、以前、外務省に勤めていらっしゃって、湾岸戦争のときにどうやって湾岸戦争に協力するか、ということで、非常にご苦労なさったと伺ってますが。
岡本 日本が海外に自衛隊を派遣するにしても他のことにしても、リスクはゼロではありません。しかし、日本では、常に100%安全だ、ということを追求するわけです。
つまり、確率の問題としても、99.99%大丈夫だから、ということを日本の社会が受け入れるだけの成熟性が、まだないんです。
ジャクソン博士の改革のすばらしいことは、「合理的なリスクをみんなで受け入れようじゃないか」ということを人々に説得してきた点にあると思います。
原子力の安全性では開かれた話し合いを持つことが重要だ
秋元 我々は日常、リスクにさらされて生活をしているわけです。
ですから、新しい技術によって日常さらされているリスクがことさらに増大することさえなければ、それが社会に与える利益を重視して進めていく価値がある、と思ってます。
しかし、どうしても新しい技術についてはマイナスの面ばかりが目につき、社会は理屈ではある程度納得しても安心はしてくれない。安心してもらうためにまた大変な努力を払う、という悪循環が起こっている。
我々が今の社会の中で生活していくためにどれだけのリスクを受け入れていくか、それに対して我々が受ける利益はこれである、という国民にみんなきちっと納得をしてもらうことが必要だと思うんです。
ジャクソン リスクを社会が受け入れるというのは、そのリスクを受けたことによって、何を得られるかということによる、と思います。
原子力の安全性については、開かれた話し合いを持つことが非常に重要になります。話し合いによって、リスクをとることによりどういう利益が得られるのか、理解が促進されると思います。
秋元 一般との議論を非常に重要視してお進めになった、と伺っていますが。
ジャクソン 原子力規制委員会(NRC)では、円卓会議のようなものを主催して、反対派、原子力産業の代表、またその他の人々も参加をして、すべての問題に関わる人たちから同時に意見を出してもらう、という機会を設けたわけです。
リスクの枠組みを用いたことによって、我々全部がその問題について共通のアプローチをすることができた、と感じました。そして、規制当局、我々NRCがリスクと安全性という重要ポイントに焦点を当てている、ということを人々に理解してもらいました。
その結果、反対派も「NRCがしっかりと仕事をしている」という信頼をもち、原子力産業界にも「NRCが単に批判的もしくは負荷だけを与えるような考え方をもっているのではない。安全性に焦点を置いている」と感じていただけました。
また、議会のメンバーも説得することができたわけです。その結果、アメリカの原子力産業全体の向上につながりました。でも、ご推察のように簡単ではありませんでした。
秋元 全く対立する意見の中から共通項を引っ張り出して、一つの方向にそろえていくという仕事は大変なことだと思うんですが、その元には提案された安全管理手法の合理性が非常に優れているということ、それから、それに対するジャクソンさんの大変な信念があったからだ、と思います。
http://www.jaero.or.jp/data/publish/bunka/taidan/2003/200401.html
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高速増殖炉懇談会の設置について
平成9年1月31日
原子力委員会決定
1.目的
原子力政策円卓会議における議論等を踏まえ、「もんじゅ」の扱いを含めた将来の高速増殖炉開発の在り方について幅広い審議を行い、国民各界各層の意見を政策に的確に反映させるため、高速増殖炉懇談会(以下、「懇談会」という。)を設置する。
2.審議事項
(1) 「もんじゅ」の扱いを含めた将来の高速増殖炉開発の在り方について
(2) その他
3.構成員
別紙のとおりとする。
4.その他
(1) 懇談会は、必要に応じ、懇談会構成員以外の者からの意見も聞くものとす
る。
(2) その他、懇談会に関し必要な事項は、座長が懇談会に諮って定める。
(別紙) 高速増殖炉懇談会構成員
秋元 勇巳 三菱マテリアル(株)取締役社長
植草 益 東京大学経済学部教授
内山 洋司 (財)電力中央研究所経済社会研究所上席研究員
大宅 映子 ジャーナリスト
岡本 行夫 外交評論家
木村尚三郎 東京大学名誉教授
河野 光雄 内外情報研究会会長
小林 巌 フリージャーナリスト
近藤 駿介 東京大学工学部教授
住田 裕子 弁護士
鷲見 禎彦 関西電力(株)取締役副社長
竹内佐和子 長銀総合研究所主任研究員
中野不二男 ノンフィクション作家
西澤 潤一 東北大学名誉教授(元総長)
松浦祥次郎 日本原子力研究所副理事長
吉岡 斉 九州大学大学院比較社会文化研究課教授
http://aec.jst.go.jp/jicst/NC/about/announce/siryo01.htm
岡本行夫三菱マテリアル社外取締役
http://www.mmc.co.jp/japanese/ir/financial/annual2001_j.pdf
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
★関連
湾岸戦争の宿願を叶えた岡本行夫ら [噂の真相2月号]
青木幹雄参議院議員と岡本行夫内閣補佐官の光と影
(2004.1.11)
アイゼンハワー大統領の「アトムズ・フォア・ピース」提案の3ヶ月後、日本は最初の原子炉予算2億3500万円を通した。50年前の話である。科学振興追加予算として突如国会提案した中曽根康弘は、原子力の自主研究開発を主張していた学術会議に対して、「札束で頬をひっぱたいた」つもりだったらしい。数年の後には戦前の財閥を中心とする原子力5グループが形成されて「だいたいひと口原子力に乗らなきゃという時代」(『原子力開発の30年』原子力産業会議)が出来上った。
珠洲原発が白紙へ
『原子力王国の黄昏』(伊原辰郎著 日本評論社)が出版されたのは1984年のことで、すでにその頃には開発の勢いが衰えてきていたといえよう。現在52基(4574万kW)が16の発電所で稼働しているが、最盛期の計画では、原発で1億kWの発電能力が目指されていた。計画通りに建設がすすまなかったのは、原発建設に対する強い反対運動があったからだ。いまもなお原発建設を止め続けている地域は22ヶ所におよぶ。
1994年には豊北原発計画(中国電力)が撤回され、96年には巻原発計画(東北電力)が住民投票で拒否され、2000年には中部電力が芦浜原発計画を白紙撤回した。地元の30年にわたる猛反対を見て、当時の北川三重県知事が撤回を求めたことが断念につながった。同県海山町での住民投票(01年11月)は原発推進派から出されたが、結果は原発の拒否だった。03年12月には珠洲原発計画(関西電力、中部電力、北陸電力)が事実上断念された。報道によれば「電力自由化や需要低迷を受け、難航する計画を3社相乗りで続けるリスクが高すぎると判断」(11月27日、朝日新聞朝刊)したためである。地元での反対に加え、電力自由化の流れが新規立地断念に影響したと考えると、建設計画が公表されている原発の10基以上が、これから断念されていく可能性が強くなった。
再処理ウラン試験入りを止める
経済産業省の諮問機関で原発のバックエンドコストの検討が行なわれている(本誌4―6ページ記事参照=略)。しかし、コストの検討は再処理の検討にはつながっていない。明らかに合理性がないことがわかっているにもかかわらず、建設中の六ヶ所再処理工場は、次の段階であるウラン試験に突入しようとしている。燃料貯蔵プールの不正溶接とその後の処理で計画は遅れているとしても、ウラン