UNICEF NEWS1997年10月号より

・北朝鮮へのユニセフ活動

5才未満の子供の38%にあたる80万人が栄養不足に直面している北朝鮮。「現在の食料不足が続けば、今冬には軽い病気にかかっただけで死の危険に陥る可能性がある」8月5、6日に、北朝鮮を視察したユニセフ事務局長ウキャロル・ベラミーは、本部での記者会見で語りました。2年続いた洪水の被害の後で、今年は干ばつ。食料となる小麦やとウモロコシ、稲に大きな被害が予想されています。なかなか実情が伝わらない北朝鮮の現実。みんなのいらいらをよそに、栄養不良になる子供たちは増える一方です。

今年の4月4日、ピョンヤン在住のユニセフ職員で、小児科医でもあるソレンセン氏がヒチョン市の保育園を訪れたところ、8860人の子供の内、約140人が深刻な栄養不良状態にあることを確認しました。緊急に対処する必要性を感じたソレンセン氏は、治療に必要な高蛋白質ミルクを作るための材料を自ら調達。地元の医師たちも訓練して、子供たちに食事療法を始めました。このおかげで一週間の内に、子供たちの体重は200〜300グラム増えたと言います。

これがいわばユニセフによる北朝鮮の子供たちへの緊急援助の始まりでした。その後、ユニセフやWFP(世界食糧計画)などの調査や呼びかけの結果、世界的な緊急援助が始まり、ユニセフは7月上旬までに約50万ドル相当の緊急支援物資をピョンヤンに空輸しました。

7月に入り、北朝鮮は、5才未満児の36.7%、約80万人の子供たちが栄養不良状態にあることを公式に認めました。一方、そのほかの海外の調査団の現地調査結果によれば、北朝鮮の5才未満児の内、5〜10%の子供たちが重度の栄養不良状態にあると報告されています。ユニセフ職員も、この4ヶ月間に、国内の4分の3に及ぶ地域の保育園、幼稚園、孤児院、小児科病院などを訪問、調査し、この状況を確認しています。(近くWFPと共に、より綿密な栄養調査が行われることになっています)

実体が見えてくるにつれ、ユニセフとしてもその支援事業の拡大を決定。緊急支援の要請額を470万ドルから1434万6000ドルに変更しました。支援内容は、(1) 重度の栄養不良児に対するリハビリ支援、(2)支援が不足している地域の子供と母親に対する総合保険事業の支援、(3)保育園、幼稚園、孤児院、小児科医院での安全な飲み水の供給と衛生施設の調査・改善、(4)300の保育園、幼稚園、孤児院への食糧支援を予定しています。

8月6日には、今まで出張所であったユニセフ・ピョンヤンが正式に「ユニセフ・ピョンヤン事務所」に昇格。北朝鮮当局者も含め、ベラミー事務局長参加のもと、開所式が行われました。この結果、援助事業の進捗状況や配給方法も、より緊蜜に監視できるようになりました。

5才以下の子供210万人のうち80万人が栄養不良、特に11万人が重度の栄養不良状態にある北朝鮮は、国際社会からの人道援助を必要としています。これまでにユニセフに寄せられた支援は、(日本の民間募金約5600万円を含めて)350万ドルに達しています。

今後も人道的観点から、引続き皆様の支援をお願いいたします。

北朝鮮の子供緊急募金口座
 郵便振替 00110−5−79500  (財)ユニセフ協会

 ☆通信蘭に「北朝鮮子ども募金」とご記入下さい。
 お問合せは協力事業部:TEL:03−3355−3222まで

・「世界の子供にワクチンを」 日本委員会

予防接種で防げる病気によって命を落としていく世界の子供たちを救う目的で活動している「世界の子供にワクチンを」日本委員会(代表 細川佳代子)は、ミャンマーとタイのポリオ根絶のため、今年12月と来年1月に実施される両国での全国予防接種デーに必要な資金6000万円を当協会に寄託しました。

ユニセフは、この資金によってポリオワクチンを国際的に調達し、ユニセフが協力している全国規模で行われる予防接種デーでタイとミャンマーの子供たちに一斉投与します。ポリオワクチンは、2回の投与が必要。

現在、世界ではポリオ、はしか、破傷風、結核などワクチンで防げる六つの感染症によって年間200万人の子供の命が失われています。同日本委員会は、ワクチンの確保に必要な資金の調達と理解促進など、世界的な人道目標への日本人の社会参加を進めています。

・「立正佼成会青年部」

立正佼成会青年部は5月18日、’97「青年の日」(第28回)を実施しました。参加した青年部員は、約3万5000人。「みんなで生きるために」をメインテーマに、全国各協会で様々な平和活動が展開されました。特に今年は、5月を「青年の日月間」とし、1ヶ月を通じてユニセフ街頭募金に力を入れる協会が目立ちました。

甲府教会では、市内の会場で「ユニセフ支援の集い」を開催しました。ステージ上には世界各国の国旗を掲揚。一食期募金を持って会場に集まった市民と共に、世界平和と子供たちの幸せを祈りました。

大田教会や唐津教会は、今年も地域の企業や団体と協力して、「ユニセフ支援バザー」を実施。会場を訪れる市民も年々増加しており、地域をあげてのユニセフ支援が行われました。なお、立正佼成会がユニセフ募金に協力を始めた1979年(国際児童年)からの支援総額は、今年で50億円を越えました。

・ユニセフ外国コイン募金が6年目に!

1992年8月より実施されているユニセフ外国コインは6年目を迎えます。開始以来1997年3月末までに、重量にして24,062Kgのコインが集まりました。海外に輸送したそれらのコインと日本で円に換金できた紙幣なども含めて、総額133,304,735円の募金が集まったことになります。国内で両替することが出来ない外国のコインを有効に使えないかと言うことでスタートしたこの事業もすっかり定着し、通常のユニセフ募金同様、大変多くの方々からご協力をいただいております。特に成田、関西、千歳、名古屋、福岡の各空港に設置してある専用募金箱は旅行帰りの方々から好評をいただいており、空港から回収されるコインの量も増えています。実行委員会としてこの事業を支える住友銀行・日本航空・日本通運・JTB・毎日新聞の各社も年2回定期的に会議を行い、この事業が円滑に進められるように支援の体制を整えています。

・日本政府 対ユニセフ任意拠出金 大幅削減を検討中

世界では、今でも年間1240万人の子供たちが5才の誕生日を迎えることなく命を落としています。その原因の多くは、予防接種で防げるはずの結核、はしか、百日咳、ジフテリア、破傷風などです。予防接種に必要な費用は一人あたりわずか15ドル。つまり1500万ドルあれば100万人の子供に予防接種をすることができ、病気で子供たちが命を落とすのを防ぐことができるのです。

この1500万ドルが、来年、ユニセフの予算から失われようとしています。

日本政府は行財政改革の一環として、来年度予算においてユニセフを含む国連機関への任意拠出金の削減を検討しています。日本政府による1997年度の対ユニセフ拠出金は、予算ベースで31億300万円、2900万米ドル。8月末に発表された外務省の概算要求案によると、この拠出金は98年度予算において41% 削減されることになっています。

ユニセフの事業予算は、皆様もご存じのように、3分の1は皆様からの民間募金で賄われていますが、残りの3分の2は、各国の「任意」の拠出で成り立っています。日本の政府からのユニセフへの任意拠出は、皆様の募金と共に、ユニセフ活動を実施するのに重要な役割を担っているのです。

この予算削減の話が、ニューヨークのユニセフ本部から日本ユニセフ協会に伝えられたのは6月末でした。日本ユニセフ協会は、世界の子供たちの「最善の利益」を守るという立場から、日本政府に対し、来年度予算においても対ユニセフ任意拠出金は本年並にするよう、以下の通り、申入れを行いました。

(1)子供を対象とした開発援助・人道支援は、人類の将来への投資であり、日本が国際協力分野において率先して取り組むべき最重要課題である。

(2) 世界中に7200名のスタッフを有し、子供への支援分野において膨大なる専門知識や経験を蓄積しているユニセフを活用することは、日本が世界の子供を支援するために極めて有効な手段である。

(3)従って、行財政改革の中で、日本の政府予算が極めて厳しい状況にあることは理解するものの、上記の理由から、ユニセフに対する日本政府の拠出金は減額されるべきではない。

日本ユニセフ協会としては、来年度予算はもちろんの事、その後の政府予算においても、世界の子供たちを中心に人道的援助を行う国際機関であるユニセフへの支援を、大幅に削減することは適当ではないことを、与野党の議員の方々、外務省、大蔵省の関係者にご理解頂き、積極的な支援を得るべく、今後も働きかけを継続します。

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